第16話

 開始から5分経過。

 体育館内は広く、30人近くの生徒が乱闘しているため、そこから納戸さんや西君のところへたどり着くのは難しかった。


「お前が倒したのは、我ら雑魚場十三夜衆(じゅうさんやしゅう)の中でも最も小物」


 さっき倒した雑魚場何某君と似たような髪型(モヒカン)をした四人組が現れた。彼らの手には、それぞれ釘バット、ボーガン、火炎放射器、モーニングスター(西洋の武器、鎖ととげとげの鉄球がついているやつ)を持っている。


「それ、私物じゃないですか?」


「もちろんだ。私物を使ってはいけない、なんてルールは記載されていない」


 ぐへへへと悪い笑い方をする。本当に同世代とは思えない連中だ。

 しかし、状況は激しく悪い。完全武装した四対一。加えて、こちらは残段数に限りがある。さらに言えば、相手の中にはボーガンと火炎放射器というリーチのアドバンテージがこちらと同等なものを所持している。

 正直、勝ち目がない。


「雑魚場一三(じゅうそう)の仇、討たせてもらうぜっ!」


 ひゃっはーと叫び声をあげ四人同時に飛びかかってきた。僕にはクイックドローの技術は仕込まれてないし、そもそも、一息で四人同時に始末するなんて、ビリーザキッドや次元大介でなければ無理である。

 とりあえず僕は全力で回避行動をとった。背を向ければボーガンで射抜かれる可能性が高い。相対しながら、バックステップ。牽制狙いで一発放つが、空を切る。

 不味い、やられるっ――

 僕は、愚かにも目を瞑り、信じていないはずの神へ祈った。


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