第12話
神代平良(へら)。彼女の引率で、学園内をぐるりと案内された。図書館、体育館、植物園、動物園、水族館――学長の独断と偏見で作られた設備らしい。とても一人の人間の私財で賄えるとは思えないほどのクオリティ。特に後半に挙げた『園』とか『館』は一般開放して金をとってもおかしくないほど充実していた。
「この学園は七曜氏の私物だ。七曜氏は自然が大好きだからな。VR装置を劇的に発達しても、やはり天然物が一番、ということで、こういった設備を学園においているんだと」
神代先生はやる気なさそうに言った。
一通り、校内見学を終えると、教室に案内された。教室は、僕が通っていた一般的な教室と大差ない。人数分の机と椅子が整然と並べられ、見慣れた緑の黒板があった。
「じゃあ、自分の名前が書いてある席に座れー」
間の抜けた声で指示を出す神代先生。学長は燃える闘魂、という感じだったのに温度差がすごい。
僕は『神田 隼人』と書かれている机を見つけ座る。隣の席を淡い期待を抱きながら眺めると『西・ローランド』と書かれていた。教室の端に目をやると、納戸さんがゆさゆさと揺れていた。『私はここだよー』と言っているみたいで、何か可愛かった。
「お前が俺のお隣さんか、よろしくな!」
ばしんと、背後から背中を叩かれたかと思ったら、校庭にいたハリウッド映画にいそうな人だった。近くでみると、その磨き上げられた筋肉に圧倒される。胸襟も上腕二頭筋も服の上からでもその存在を誇示するかのように大きく発達している。この後、バトルロイヤルでもあったら、僕は絶対にこの男には勝てないだろうな、と種としての敗北を感じた。
「どうも、神田です。よろしく」
「俺は西・ローランドだ」
西君は、快活に笑い、僕に握手を求める。握り継ぐされてしまうか不安だったが、見た目に似合わず、優しい握手をしてくれた。
「みんな席についたなー。じゃあ、一人ずつ前に出て自己紹介よろしくー。名前と好きな食べ物くらいでいいからー。ぱぱっとなー」
神代先生は、だるそうに言って、自己紹介タイムを始めた。
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