第10話
「じゃじゃーん、スイート・シュガー・ナイトメア! 略してSSN!」
猫型ロボットが秘密道具を披露するかのように、明るい口調で学長は黒布を取り去る。SSNと呼ばれる装置は、大きな椅子とゴーグルのようなヘッドセットがついている。後ろに電源装置なのか、椅子と同サイズくらいの黒い箱がくっついている。
「私が何で財を築いたか、お前も知っているだろう」
「VR……仮想現実装置か」
「ご名答。今から、お前に私の青春時代を追体験してもらう。なあに、時間は5分とかからんよ。これで、先と同じ言葉を吐けたらルールの改変でも、学園の解体でもなんでもやってやろう」
自信満々の学長。さらりと凄いことを言う。もし、学園解体とかになったら、いきなり転校の憂き目にあうのだろうか。
「その言葉、二言はないな」
「もちろん、私はこのかた嘘をついたことはない」
全て現実にしてきたからな、と学長は笑った。
「御託はいいから、さっさと入れ。お前のせいで無駄に時間がかかっているのだからな」
桜坂を強引に椅子に座らせ、ヘッドセットをつける。
椅子に座ると、桜坂はシニカルに笑った。勝利を確信したかのように。
そんな彼の笑顔に気づくこともなく、学長はパチンと指を鳴らした。
「それでは、どうぞごゆっくり」
良い旅路を、と学長もシニカルに笑った。
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