第4話

ヴァルハラ高等学園。通称、青春禁止のヴァルハラ。

 世紀の大発明家、山本七曜(やまもとしちよう)氏が私財を投じて建てた、教育機関。

 この学園の特徴は大きく三つ。


一つ、男女間の交際の禁止。

二つ、部活動の禁止。

三つ、研究・芸術への圧倒的投資。


通常の学園では考えられない特徴。三つ目の研究・芸術への圧倒的投資は、学生が妥当性を持つ企画を学園側に提示し、受理されれば100円でも1億でも資金が降りるという、天文学的資金力を持つ七曜氏ならではのルールだろう。事実、ニュース等でヴァルハラ学園の学生が出した成果をよく目にする。

だが、問題なのは残り二つの特徴だ。男女交際の禁止と部活動の禁止。この特徴のせいでヴァルハラ高等学園は『青春禁止』と噂されるようになった。特に、男女交際についてのルールは厳格で、発覚した場合七曜氏の私設戦闘部隊に消されるとの話もある。


――まぁ、女の子とキスしたら爆発するかもしれない僕には関係のない話なのだけど。

 

 そもそも、それこそが僕がこの学園を選んだ理由でもある。春哉さんの勧めもあったけれど、不用意に女の子と恋愛できる状況になければ、僕の命は保たれる。

 小・中と共学のところで生活してきたけれど、僕も男の子だから、淡い恋心を抱いたこともあった。恋愛ドラマを見て、こんなロマンチックな恋をしてみたいと思うこともあった。しかし、それは僕には叶わない。


――だったら、そんな夢を見れない場所へ行けばいい。

ヴァルハラ高等学園には世間一般の高校生が経験するだろう青春はない。代わりに、圧倒的な資金力を含めた快適な学習環境がある。どうせ、キスしたら死ぬ命、他に幸せを見つけたほうが賢明だろうというのが、僕の考えである。

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