第3話


「忘れ物はないか? 歯磨いたか? 神様にお祈りは済ませたか?」


 春哉さんは冗長ぽっく言う。


「忘れ物はありませんし、歯も磨きました。それと、僕は無神論者なのでお祈りはしていません」

 

 僕は神様を信じてはいない。本当にそんな存在がいるならば、僕の父は木っ端微塵に砕け散ったりしなかったはずだ。僕が信じるのは悪魔とか、幽霊くらいだ。人間に対して、不条理に悪逆を行える高等な存在。人間に対して、祝福や幸福を与えてくれる、そんな都合の良い存在なんて信じない。春哉さんのことは尊敬しているけれど、そこだけは相容れない。


「信じる者は儲かるって諺をいい加減認めて欲しいもんだけどな。ま、別にいいさ。自由に、思うままに生きな。それが政次への孝行ってもんだ」


「ありがとうございます。では、行ってきます」


 春哉さんに一礼し、僕は学園に向かった。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る