第2話

「どうした、隼人。顔色が良くないな」


「あ、春哉(はるかな)さん。おはようございます」


 キッチンには、僕の養父である神田(かんだ)春哉さんがコーヒーを飲んでいた。春哉さんは僕の父の親友で、蒸発した父の代わりに僕を育ててくれている。すらりと腰まで伸びている栗色の髪が綺麗だ。そのことを話すと、いつも照れる。そんな可愛い38歳未婚独身男性だ。


「夢に父が出てきました」


「なるほど、それゃ顔色も悪くなるな。ちなみに、親父さん――政次(まさつぐ)は何か言ってたか?」


「いつものように、女の子とはキスをするな、爆発して死ぬから、と言ってました」


 春哉さんは、なるほどねぇとコーヒーを口に含む。


「僕は、本当に女の人とキスをすると死んでしまうのでしょうか?」


「一般的には死なないだろうな。どうゆう原理で、人がキスして爆死するのか、俺には皆目見当がつかない。本当かどうか、適当な女子捕まえて試せ、と言いたいところだが、それで死んだらしゃれにならん」


 事実、政次はそれで爆死したからな、と春哉さんは続けた。


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