第7話「ソラ粒子は万能です」
「リクは余計なこと考えなくていい、これは僕の仕事だ」
意気揚々としてるところ悪いが、さすがに子供を危ない目にあわせうわけにはいかない。僕は精いっぱいの大人力を発揮して、リクを制止することにした。
「だけどさ、太陽はさ俺がいなけりゃストーカーの存在にも気づけなかったわけじゃん。俺無しでどうするつもりなの?」
ぐぐっ、痛いところを突かれた……。
たしかにリクなしでは、何も気づかず、「ははっ、考えすぎですよ、心配しなくてもよさそうですね」とかいってレイナさんをマンションに帰すところだった。
かといって、これ以上リクだよりになるわけにもいかないしな。一応二児のパパとしてプライドというものがあるし。
「何とかするさ、敵が光学迷彩使ってるなら、アクティブソナーとかで測位することはできるだろう。そんなに手に入れるの難しいわけじゃないしな」
さっきのリクの説明なら、音を反響させることで、ストーカーの位置を探ることはできるだろう。ならばリクの手を借りる必要はない。
「ソナーねぇ、太陽のおじさんのわりにはいいアイデアだと思うけど。たぶんそれだめだよ、反響すらさせない素材を使ってるから」
「なんだ、そのチート素材は!そんなんまであるのか」
そんなん反則だろ!
「どちらかと言えば、2025の
インビジブルウォーか、今はもう懐かしいけれど、世界が亡びるかもしれなかった戦いである。その割にこの戦争の存在を知ってるのはごくわずかしかいない。
「って結局それじゃあ、リクがいてもどうにもならないだろう。いくら耳がいいとはいえ、常に動いてる敵の位置をいちいち把握できないんじゃないか」
さっきに映像での確認だって、結構時間をかけていたようだしな。かといって、僕ではもっとどうにもできないけれど。
「いったじゃん、元々は俺たちの技術だって。もちろん《ソラとリク》俺たちはこの技術が無効にわたることも考えてるから、あの特殊光学迷彩を見破る方法はある」
そういってリクはザ・ドヤ顔!を決める。
たいそう、さまにはなってるけどムカつくんだぜ。
それにしてもあるのかよ、そんなもの。
「それはなんなんだ?」
と僕が聞いたところで、リクは何も答えない。そして、悪そうな表情で僕に聞き返す。
「俺には頼らないんじゃなかったの?」
リクはめちゃくちゃにやにやしている。
くそっ、この野郎完全に大人をからかってやがる、く、悔しい。
「情報だけ教えろ」
「教えろ??」
「……教えてください」
なんという屈辱……7歳のガキにこんな扱いを受けるなんて、こんな正確にした親の顔が見てみたいもんだぜ。
土下座しろとかまで言い出したら、さすがに殴るからな。
すると、リクは悔しそうな僕の表情を見るだけで満足したようだった。
「しょーがないなあ、太陽おじさんは。俺がいないと何もできないじゃないか。
まあでもわかったよ、いいものを持ってくるからちょっと待っててね」
そういってリクは、事務所と自宅をつなぐドアを開けて、ドタドタと階段の方へ走っていた。
そして、何かゴーグルと500ミリのペットボトル位の大きさの金属の筒を僕に手渡した。
「これはなんだ?」
「人工超微粒子発生装置とその探知ゴーグルだね」
「何ができるんだ?」
「うーん、分かりやすく説明すると、その筒から親父が開発したソラ粒子が発生するから、それをゴーグルで探知しようということだね」
「???もう少し細かく話してくれていいんだが」
「……ええっと、ソラ粒子っていうのは、非常に微小な粒子でPM2.5の大きさ位にもかかわらず、なんと電波に干渉することができる性質を持つうえ、さらにあらかじめその粒子がどういう反応をするかをこちらで設定できるというまさに万能粒子なんだよ。そして、そもそもではその万能粒子はどういう仕組みで成り立つかというとね……」
……やばい急にリクが饒舌になってきた、これは長くなるやつだ。
「……だから、その粒子が特定空間で転移するときに……」
ええと天使がなんだって……
やばい、眠い……かれこれもう5分以上。
「……でエネルギーなんだけど、これはもちろん太陽から得ることができるという、ソラが有機生命体をヒントに考えだした技術なんだよ。俺の父さんはやっぱスゲーな、俺はさすがにエネルギーに関するブレイクスルーはできなかったよ。ん、太陽、聞いてるの?」
――んんっ、やっと話が終わったかな。
「―――あ、ああよくわかったよ、すげーんだな。で、結局どうするんだ、これ」
「……聞いてなかったのか。とにかくその筒からは半径5kmに向かってソラ粒子が放たれるから、それをゴーグルでサーチすればいいよ。光学迷彩とはいえ粒子が付着することは避けられないから、肉眼の視界に入らないのにも関わらず、粒子を付着させて動いてる物体があったらそれが犯人だ」
ほうほうなるほど、要するに通常であれば、肉眼で映る物体に粒子がくっついてるようにみえるけれど、もし、光学迷彩つけてる奴がいれば、粒子だけが人の形をかたどって動いてるように見えるわけだ。
こりゃあソナーとかより、よほど楽じゃないか。
「本当はこういう使い方をする粒子じゃないんだけどね、もっと複雑にいろいろできるんだけど、今回はもっともオーソドックスって感じかな」
超技術過ぎてついていけないけれど、これよりすごい使い方があるっていうのか。
「とにかく、肉眼では映らない、粒子では反応してるってやつを探して歩きまればいいわけだ。というか、レイナさんのマンションの近くで待ち伏せする方が早そうだな」
さすがに東京内を歩き回るのは苦痛すぎるし。
するとリクは少し考え込むようにしてから言った。
「むこうはもう太陽のこと知ってるはずだから、待ち伏せはばれると思うよ。俺も空中からターゲットを探すから、太陽おじさんは俺の指示で、ターゲットの近くに行って、ターゲットを確認後つかまえればいいと思うよ」
「……了解」
なんだか結局リク頼りで、探偵活動することになってしまったな。
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