第6話「見えない敵と戦います」
リクは「犯人がいる」とディスプレイを指さす。
しかしもちろん、僕の目には何も映っていない、何を指してるんだろうか?透明人間いるとでもいうならわかるが。
「リク、僕の目が悪いのかもしれないが、何も見えない」
それを聞いて、軽く笑み浮かべながらリクは答える
「そうだね、見えないと思う、実際見えないからね。でも確かにそこにいるよ、エアコンの真下で、ガラス戸の前で立ってるかな。まあ細かいしぐさとか、顔とかそういうのはわからないけど、間違いなく人がいる」
そういわれて、ジーっと見るけど僕には何もわからない。
「光学迷彩とかなんかなのか?」
光学迷彩、別名ステルス迷彩はメタルギアソリッドでもおなじみの自分の体を完全に周囲に同させて見えなくするものである。メタルギアよりは攻殻機動隊の方が印象深いかもしれない。
確かに10年前には開発されていた技術なのだが……。
「そうだよ、光学迷彩を使ってるんだよ。存在を知ってるなら、なぜ疑わないの?」
そういってリクは首を傾げた。
確かに光学迷彩は知ってる。
ただ、言ってもあれの仕組みっていうのは、モニターとカメラが一体化となったパネルで、マントとか衣服を作り、反対側の景色を映し出す物だ。行ってしまえば、スマホをたくさん身に着けてるのと変わらない。
それゆえに、動いたりすれば違和感があるし、そもそも注意深く見れば、分かってしまうようなものだったはずだ。いくら何でも半径5m以内にいてわからないはずがない。
「……リク、それだけはない。僕のサングラス型端末には、熱センサーも、音センサーもついている。たとえ光学迷彩をつけていても、僕にはわかるはずだ」
そう、2029年では光学迷彩はそこまで珍しいものではない(とはいえやはりそうそう目にすることはないのだが)、だから探偵としてその対処はしているのだ。
熱センサーや音センサーで、見えないものをチェックすることは当然してるのだ。
「……まあ結局光学迷彩は、実戦ではやくたたずだったからね。人間の目はごまかせても機械の目はごまかせない。実際に戦争で、光学迷彩が使われた例はほとんどないんだけど、ただ、アンチサーモ、アンチノイズという完全ステルス迷彩を
とても7歳の言葉とは思えないが、間違いなくリクの発言である。
熱源を探知されず、音源も探知されない。
もちろん目でとらえることもできない。
パーフェクトアブセンス?とは聞いたことがない言葉だが。
そんな恐ろしいアイテムが開発されてるなんて、さすがに僕の予想の範疇外だった。というか、僕は、安心しきっていた。
だが、リクの話を信じるなら、わけのわからないことがある。
「なあ、リク。熱源でとらえることも、音で探ることもできず、視界でもとらえられないなら、リクはなぜ、この映像を見て、誰かがいると思うんだ?少なくとも映像からではわからないはずだろう……」
「そうだよ、映像からではわからない。だから音で判断したんだ」
「――音、音だって?だってアンチノイズなんだろう。音さえもしない光学迷彩だと、今リクが言ったんじゃないか?」
所詮7歳のいうことだ、語るに落ちた。自ら矛盾を暴露しやがった。
「俺は耳がいいんだよ、太陽おじさん、おじさんにはわからないかもしれないけど、パーフェクトアブセンスは、自らが出す音を消すことができても、他者が出す音を消すことまではできない」
「どういうことだ?」
「世の中は音で満ちている、無音は存在しない。どこにいたって何らかのノイズがある。だから、ノイズを消すことはできない、例えばエアコンが出すノイズを、ステルス迷彩は消すことができない。それゆえに、エアコンの下に遮蔽物があれば、音は奇妙なものになる。本来の音ではなく、遮蔽物を通した違和感のある音にしかならない」
「……。」
「エアコンから出る空気の音に俺は違和感を感じた、空気の流れるおとがおかしい。おかしくなった音の変化を探っていけば、もうそこに人がいることは明らか。だからさ、太陽おじさん、この部屋にはもう一人、人がいたんだ。決して見ることも聞くこともできない人がいた。それもすごく近くにいた」
ぞわりと、背筋が凍りつく思いがした。
ずっと、ずっと犯人はあの場にいたのだ……。
また、同時にリクの耳の良さにも驚愕する。こいつは、普段いったい何を聞いてるのか。
「ってことは、犯人は僕とレイナさんの会話を……」
「そう、完全に知ってると思う」
「じゃあ、今レイナさんが僕の家にいることも……」
「知ってるはず」
リクは決め顔で僕にいう、僕は一方大変情けない顔をしてただろう。
何が、僕の家に来れば、安全だ……
すべて犯人に筒抜けじゃないか。僕はひたすらにへこまされた気がした。
「太陽おじさん、そんな世界が終わったような顔をしなくても……」
非常に心配そうな顔でリクは僕を見る。
やめてくれ、今お前に同情されるのが一番つらい。それより、レイナさんが心配だ。何せ敵は、完全ステルスで行動できるのだ、もしかすると我が家にすでに潜入してるかもしれない。
そう気づいて、僕は慌てた。一刻も早く、周囲の調査をしなければ!
「おい、いま、あいつは、下着泥棒はどこに?」
僕はリクに対して問い詰める。
「心配しなくても、この家は大丈夫だ。地球人ごときの技術で欺かれるような
そういったリクの目はキラキラしていた。
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