見つけるのは

「つまりなんだ。何かあるのか?」


「ある」


自身ありげに頷く哲郎。


「当然敵も最後の一人になればワープを使って逃げる事は分かっている」



「……張られているのか?」


「そういうことだ。やつはこれだけ余裕がある。きっともうワープゲートの位置は知っているはず」


時間があり、魔法陣の書き換えに来る気配もない今、残された生存者がワープゲートへ飛び込む気だと分かる。

そうなれば、必死になって周回する必要がなくなり、他の場所の見回りに行く余裕すら出てきているハズ、


結果的にワープゲートの位置を確認され、最後の一人も逃がさないよう張られることになるのだ。


「ならどうする?結局全滅なんじゃないのか?」


そうなれば残りの一人も結局ヤツの餌食になるだろと肩を落とすジェームズ。


「そうだな、正直こればかりは何とも言えない。たまたま運良く見つからずにスッと逃げられることもあればそううまくはいかないことがほとんどだ」


うまく敵の索敵をすり抜け、ワープゲートに入ることができれば、こちらの勝ちだというが、それが難しすぎる。


敵は空を飛んでものすごくいい目を持っている。

アドルフのやられ方から運も持っているようだ。


こちらの運良く、は今回に限っては期待しない方が良いだろう。


「だろうな」


それを理解しているであろう哲郎も頷く。



「ここで俺のもう一つのスキルを使う」


悪いことを考えている笑みを浮かべる哲郎。


「スキルは一つじゃないのか?」


ジェームズは、そんな哲郎の考えが理解できず、首を傾げる。


「ああ、実は一人で複数スキルを持つこともできる」


哲郎は"フレンド画面"を出すと自らの"ステータス"をジェームズに見せる。


「これはよほど信頼できる人間にしかしちゃダメだぞ?この通り、俺には"視覚共有"意外にもう一つ、"自己犠牲"というものがある」


「自己犠牲?」



聞くからに不穏なスキル名に渋い顔になるジェームズ。


「そうだ。スキルはこの世界でそれなりに過ごしていると身につく、これは俺自身できれば使いたくないスキルだが、この状況を打開するにはこれほどいいスキルはない」


そういいブレードを持つ手に力を入れる哲郎。


「……まさか」

その様子を見て、あることを察したジェームズは息を飲む。


「そう、このスキルは自分の命と引き換えに生存者全員にパワーアップを付与するスキルだ」


「……そうか」


「パワーアップの方はあまり意味がないが、好きな時に死を選べるというのは、ヤツの隙をついてワープゲートに飛び込むにはもってこいだ」


つまりはワープゲートを見つけ次第、確実にワープゲートに飛び込める状況になり次第哲郎が自害するということだ。


「我が国流の言い方で切腹だな、切腹」



「本当にいいのか?」


軽い雰囲気を作っているのが分かる。


ついさっき出会ったばかりの人間にここまでできるかと疑わずにはいられないジェームズ。


「……いいさ、この世界に長くいると人を見る目は自然と養われる。信頼できるヤツ裏切りそうなヤツ、賢そうなヤツ、裏表がありそうなやつ……ジェームズ、お前はいいヤツだ。自分が危険な状況になっても人のために動けるヤツ、この世界では珍しいくらいお人好しだ」


哲郎はジェームズの目を真っ直ぐ見つめて話す。


「俺はそういう人間が大好きなんだ。そういう人のために何かしてやりたいと思うし、酷い目に合うところを見たくない。だから俺はお前が生きるために死のうと思える」


哲郎の笑顔を見たジェームズは何もいい返せなくなる。


「……わかった。なら俺はお前のためにも生きよう。必ず生きてこの世界を出る。もし彼女も一緒にこの世界へ来てしまっているなら一緒に帰る」


「そうだ。そのいきだジェームズ。必ず生きてここを出ろ、そして生き残った時はまた飲みにでもいこう、あの二人も連れて」



「……ああ、必ずだ」


話を終え、動き出す二人。


ワープゲートを見つけるまで無言だった。

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