14話 ようこそ! ギルドハウスへ
「おせえ! 何時だと思ってるんだ! お前はあれか? 頭ン中にオレンジでも詰まってるのか?」
期待を膨らませてギルドハウスの扉をくぐった僕を出迎えてくれたのは……
目つきがものすごく悪く、不機嫌そうななっちゃんをさらに不機嫌にした顔をし、片手で大皿に山盛りの焼きそばを持った、エプロン・三角巾姿のおじさんと……どこかで聞いたことのあるセリフの罵声でした……
*****
「おら! ミカ、まだ食うんじゃねーよ。 手はダメだろ、せめて、フォークを待て! おーい、リア! 皿とフォーク、先にもってこい。 ゲスト用のは、なんだっていいや!」
てきぱきと不機嫌そうな罵声を飛ばしながら、左の部屋に消えていくエプロンさん。 なっちゃんは、「上座に座ってね」といってから、「リアさーん! あたしも手伝うよー」と右の部屋に消えていった。
上座を探して、ひとまずエプロンさんの入った左の部屋を覗いてみる。
すると、リビング兼ダイニングと思わしき部屋は、紙テープや紙で作った花で飾られ、上座と思われる席の壁には、「ようこそ!天魔」と書かれた横断幕が掲げられていた。
「うわー……」
僕は、あっけに取られながら、部屋を見回す。
部屋の壁・天井は、白く、腰の高さの木板がぐるりと周りを取り囲んでいた。 天井には、少し小さめの照明が光を放ちながら、ぶら下がっている。
壁周りに装飾品はなく、あまり高くない本棚が1つだけあった。 そのうえには、かなり大きめの天使の人形が飾られているのが、印象的だった。
(ミカさんの趣味かな?)
そして、中央に大きめのテーブル。 上には山のような量の料理が、所せましとひしめき合っていた。
広い方に2脚ずつ、上座と下座に1脚ずつ、計6脚の椅子が並べてあり、現在、主がいるのは、上座を正面に見て、左。 ちょうどミカさんが、山盛りのから揚げをつまみ食いしようとしていた。
「天魔さん、こっちですよー」 と、手を振りながら、にこやかに出迎えてくれるミカさん。 僕はその手に答えながら、呼ばれたほうへ向かおうとする。
すると、「邪魔だ!」 エプロンさんにお尻を蹴られる僕。
エプロンさんは、フルーツの盛り合わせをテーブルの唯一空いているスペースに置くと、「おい! いつまで用意に時間かかってるんだ! 飯が冷めちまうだろ!」 と怒鳴る。
さっき部屋に入ったエプロンさんが後ろから来たことに驚いていると、出入り口が部屋の奥にもあることに気づく。
そのタイミングで件の出入り口から、銀髪の女の人(僕より少し年上だろうか?)が、両手にお皿をかかえて入ってくる。
ミカさんが立ち上がり、その女性のお皿を半分受け取ると、二人で椅子の前にてきぱきと並べ始めた。 そこになっちゃんが加わって、フォークを3人で手分けして配る。 これでテーブルのうえは、本当に置く場所がなくなった。
エプロンさんが三角巾を取りながら、下座の席の前に移動。 ミカさんが先ほどの席へ。 なっちゃんがその向かいに移動し、銀髪の女の人がその隣りへ。 そして、みんなの視線が僕に集まる。
視線を受けて、僕はいそいそと上座への移動を再開する。
エプロンさんの後ろをとおり、テーブルを時計回りに移動したところで、急に天使の人形が落ちてきた。
「うわ!?」 突然のことに驚き、声を上げながら転ぶ僕。
「大・成・功ー!!」 と沸くギルドメンバー一同 (エプロンさんだけは、不機嫌そうでした……)
「いやー、ごめんね。 みんながどうしても、っていうんでさ」
転んだ僕に手を差し伸べてくれたのは、天使人形、いや、かなり身長の低いギルドメンバーさんでした。(お面をかぶっているので、性別不明。身長はなっちゃんより低いので、150cmぐらいかな?)
「ありがとうございます」 差し出された小さな手を取りながらお礼をいう僕。
天使さんは、ミカさんの隣に移動し、僕はようやく上座の席にたどり着いた。
「よし、ようやく、そろったな。 つーか、お前ら、ちんたらしすぎ。 俺がケツカッチンなの、わかっててやってただろ?」
エプロンさんは、さすがに怒鳴らなかったけど、不機嫌そうに声をあげる。
そして、『移動器』を確認すると「あと10分かよ。 お前ら、覚えてろよー」と恨み言を吐く。
(多分、この人がギルドマスター、シャドさんだよね……)
想像してたイメージとは、かなり違ったけど、かなり怖い。 第一印象は、それだった。
「シャドさん、乾杯乾杯!」 なっちゃんが、シャドさんを急かす。 (あってました)
「わーってるよ」 とシャドさん。
「全員、グラス、持て。 今日は、酒、禁止だからな!」 そういって、自分のグラスを持つ。 そして、僕を含め、全員がそれにならう。
「えー、天魔くん。 まだ、仮所属の状態ではありますが、我々は君を歓迎します。 今日はささやかな宴を設けましたので、楽しんでください。 なお、メンバーに手を出した場合は、ギルドマスター直々に制裁を加えますので、ご了承ください」 さらっと物騒なことをいう。
「んじゃ、乾杯!」 「「乾杯ー!!」」 そういって、みんなでグラスを持った手を高々と上げる。
僕は、初めての体験が続き、ひたすら感激していた。 体の芯がブルッと震え、全身の毛が逆立ちっぱなしだった。
「天魔、天魔。 感激するのは、あとあと!」 なっちゃんが、口の前に手をたてて、小声で僕にそう、ささやく。
僕は、笑顔でうなずくと、グラスに注がれた黄色い液体。 何かと僕に縁のあるオレンジジュースを一気に飲み干したのでした。
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