第22話

魔導機動隊の隊長はイライラしていた。


「おい、ちゃんと連絡はしたのか」

「はい、ちゃんと連絡しました」

「くそっ。なにやってんだ、あのアホは。まあいい、コーヒーでも買うか」


隊長が自動販売機でコーヒーを買おうとしたとき、空き缶入れから何かが飛び出した。


「こら~!だれがアホやねん!」

「うおっ」


飛び出してきたのは神野 陽子。

妖魔を封印するためにやってきた黒巫女だった。


「いつからいた!」

「さあねぇ~」


隊長は陽子の顔を見て思った。

な、なぐりてぇ~、と。


「まあいい。さっさといって倒してこい。みんな待ってるぞ」

「・・・・」


陽子は聞こえてないのか動こうとしない。

聞こえなかったのか?

そんなわけないと思うんだが。


「陽子、早く倒してこい。聞こえてるんだろ」

「やだ」

「なに。お前黒巫女だろうが!」

「まあね」

「だったらさっさといけ!」

「やだ」

「なんでだよ!何が気に入らねぇんだよ!」


隊長のイライラは頂点に達しようとしていた。


「なら、教えてやろうかな」

「おう。早く言ってみろ」

「あんたの態度が気に入らない。もっと丁寧に、わたしを敬うように」


ぷっち~んと、隊長はとうとう切れた。


ばちこ~んっ!

「いった~」

「何が敬えだ、アホか!さっさと行かねぇと、卍固めすんぞ」

「いたたたた!もう、コブラツイストしてんじゃん!」


隊長がコブラツイストを解くと、陽子は距離をとって隊長に向かって言った。


「ば~かば~か、お前の母ちゃん、で~べ~そ~」


捨て台詞をはくと陽子は、妖魔のもとへ行ったのだった。

あほが。

俺の母ちゃんは、お前の母ちゃんでもあるだろうが。

そう、この二人は、兄妹の間柄だったのである。

二人の兄妹が、アホなコントのようなことをしていた頃小夜と村正は、次なる獲物を探していた。


「どう、村正。何か感じる?」

「そうだな、たぶん青江正恒がある」

「へ~え、そうなんだ」


そう小さく呟いた小夜の顔は、うれしそうに笑っていた。

小夜と村正は、夜になったら現れるように妖魔を配した。

そして夜になり、小夜と村正が現場に着くと、もう黒巫女たちは妖魔を封印して帰るところだった。


「えっ、ど、どういうこと。まだ、時間はあるはずなのに」

「おまえ、時限式に失敗したな」

「ち、ちがうもん」

「だったらあれはなんだ?」

「うるさいうるさいうるさ~い!」


小夜の大きな声が聞こえた黒巫女たちは、一斉に小夜達のほうに目を向けた。


「あ、あれは、狐面の悪魔!」


小夜はそれに気付き、こっ恥ずかしい気分になった。

狐面の下の小夜の顔は真っ赤になっていた。


「もうなんでもいい。はやく正恒もらって帰る」


青江正恒を持っていた黒巫女は、自分のことだと気付き、小夜に切っ先を向けた。


「あ、あたしの正恒を狙ってるの?」


小夜は少しだけ真剣な顔になり頷いた。


「か、簡単には渡さない」


切っ先は震えていた。

それを見た小夜はため息をつくと、一足飛びに黒巫女に近づくと、鞘を黒巫女のみぞおちに叩き込んだ。

黒巫女は何が起こったのかすらわからずに、気を失った。

宿に帰った小夜は、いつものように手入れを始めた。


「刀姿は、腰ぞりで踏ん張りがあって小切先かあ。古備前正恒に似てる。地鉄は小板目で、地沸もよくついてる。刃紋は直刃で小丁子かあ。やっぱり古備前正恒に似てる。何か関係あるんだろうなあ~」


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る