4.彼女はそれから

 僕は黒い彼女と並んで立っている。一体どういうことだろうか。今までも、確かに並んではいたのだ。一切関わることなく、黒を眺めていた。それが今では、彼女と触れる肩からも、僕の肩を地面と勘違いした空からも、黒が染みている。


「すみません、ありがとうございます、傘、助かりました。」

「ああ、いえ、気にしないでください。」

「本を読んでいたおかげで、助かりました。」

「本、面白いですか?もしかして、黒い本しか読んでないのですか?」

「気づかれましたか、そうですね、最近は黒い本ですね。だから、全身黒いんです。」


『黒い彼女』は、黒い本に従うのか。僕の中に衝撃の事実が染みわたる。


「でも、これで最後です。」

「読み終えたのですか、黒い本。」

「はい、しっかりと。」

「それじゃあ、次は一体何色になるんです?」

「黒を脱いでから、決めます。」


 彼女は黒からの逸脱を宣言し、さっぱりと笑った。

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