彼女の青空/終

 透き通るような青空の下、一組の男女が立っていた。


 そこは天音家と彫られている墓石の前だった。


 男性の隣の女性は、やたらと厳しそうな顔をしている。


 二人は手を合わせ、じっくり時間を掛けて黙祷を捧げ。


「二人同時で、でした」

「そう……なんですか」

「貴方が出てくるまではとずっと言っていたのですが、やはり歳には勝てなかったようです」

「随分とお待たせしてしまいましたから……」


 ふぅ、と彼は細く息を吐いて空を見やった。


「そう言えば美星の動画、いい加減観たいのですが」

「あぁそうでしたね、失礼」


 女性はもう何年も前のスマートフォンを彼に渡した。ロックはされておらず、解除ボタンを押せばすぐにホームが表示された。


「これですかね?」

「余計なものはないようにしていますので」


 ホーム画面の中央には、動画のショートカットがある。


 それを彼はタップする。


 画面一杯に表示されたのは、もう朧気な記憶になった彼女の病室と、今でも鮮明に思い出せる彼女の笑顔。


 手紙を書き終わった時なのだろう。


 便箋を綺麗に折りたたみながら、彼女はそれを撮影者に渡した。


 そしてベッドの上でわざわざ佇まいを直して正座をし、顔を真っ赤にしながら彼女は。


――愛しています、久城さん。夢の中でもいいので、結婚してください。


 なんて、三つ指をついて言ったのだった。

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彼女の青空と、私の雨空 南多 鏡 @teen

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