夢の中で/彼を想う
夢を見てしまったの。
彼と一緒に、歩けるのではないのかしら……って。
彼はね、私が空を見ていたら、きっと私を見てくれている。空ではなく、私を。だから私は「なぁに?」と声を掛けて、「何でもないさ」と、彼はいつもみたく短く笑うの。
悲しい氷の笑みを浮かべながら。
だから私は、その氷を溶かしたいなんて……おこがましくも、思ってしまった。
だって、仕方ないじゃない?
それに救われたんだもの。
それがなければ私はきっと、もっと早く夢を諦めたんだもの。
死ぬ以外の望みを見つけられるなんて、思わないじゃない?
いつ死んでもおかしくないって、言われたのに。
お父さんも、お母さんも、ましてや一緒に産まれた双子さえも一緒に死んだのに。
私だけなの。
私だけ、仲間外れで生きているんだもの。
おかしいじゃない。
だって、私が一番に死ぬべきなのに。
そう私は、産まれたはずなのに。
なんで私が、今もこうして生きていないといけないの?
――君は生きていて良いんだよ。世界の誰も……勿論君自身だってそうさ、否定しちゃあいけない。
ねぇ、やめて。
――君はそんな風に笑うのがよく似合う。冗談じゃなく、本気で。悲しく笑うのはもうやめたほうが良い。
貴方の悲しい笑みなんて、もう見たくないんです。
仕方ないな、まったくもう、わかったよ、そんな風に笑う貴方が、私は好きなの。
――貴方の代わりに、私が泣いてもいいですか?
だって貴方は、悲しいくせに泣かないのだもの。
――――お礼に……いつか私が君の代わりに泣いてあげるよ。
忘れていないと、いいのになぁ。
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