滅私奉公/夢の終わり

 いつからか、私は夢を見なくなりました。


 その原因はきっと、私が夢を見なくなったからだろうと思います。


 今私が言った夢というのは、眠っているときに見る夢ではなく、憧れや未来を願う、そんな夢のことです。


 こんなことを考えてしまうのは、きっとこの部屋が真っ暗だからかもしれません。


 そろそろ、眠らないといけない時間なのかしら。


 それとも、起きないといけない時間なのかしら。


 どちらかはわかりません。


 この部屋は本当に真っ暗で、瞼を開いているはずなのに、何も見えないのですから。


 でもどうやら、私の体は眠りを求めているようです。ひどく疲れたときのように、胸を中心にずっしりと体が重いから。


 それでも私は体を捻って、窓があるであろう方向を見ました。部屋は真っ暗で、本当にそこに窓があったのかしら、なんて思える程です。


 誰かがあそこから、私を連れ出してくれないかしら。


 あの窓が解き放たれたその瞬間に、きっとこの部屋には光が差して、私が知らない世界が広がるのでしょう。


 けれど私にはわかっています。


 そんなこと、有り得ないのです。


 私は生涯ここにいなければならないのです。この真っ暗闇の中で、いつまでも捕われ続け、やがてその闇に死を抱きながら沈むのです。


 何故今まで気付かなかったのか。私は今更ながらに後悔しています。


 もっと早く。そう、夢を見なくなったその時に、気付くべきだったのに。


 何故私は、それでも


 この世に、絵本のような王子様なんて存在しないのに。


 この世に、小説のような奇跡など存在しないのに。


 この世に、ドラマのようなロマンスなんて存在しないのに。


 この世に、なんてもの存在しないのに。


 だからきっと、私なんて存在してはいけないのに。


 何にしがみついて生きるのだろう。


 何にと言うのだろう。


 哀れな娘と罵られ。


 不幸な娘と嘲られ。


 儚い娘と侵される。


 誰もが私を殺そうとする、こんな狂った世界に私は何も、ことなどありはしないのに。


 それだというのに私は……。


 彼のを、もっと見ていたいと、願ってしまった。

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