第24話 曲名『スリー・ミニッツ・ナイト』

 発光した中央のオブジェ。

 そこには八つのスイッチ。


 左から①、②……最後は⑧と書かれている。


 見たところ鍵盤のよう。

 奥のモニターにも動きが。


「な、なんだ……?」


 そこにはこんなアルファベットが浮かんでいた。


 CAGED


「ケージ?」


 確か、『鳥かご』とかいう意味だった気が。


 何が何だかわからないけど、とりあえず①のスイッチを押してみることにした。


 ツッツーッツー

 ツッツーッツー

 ツッツーッツー


「…………?」


 低い音。まるで楽しいことが始まる前の期待と興奮を表現した、それは静かで欲情的な音楽。その一定のリズムと僕の心臓のリズムがやがてシンクロする。


 奥のスピーカーから流れてくる。モニターの表示も変わった。


『スリーミニッツナイト』――曲名なのか?


 やがてこれまた静かに男声のボーカルが入る。これから楽しいパーティに出席する人みたいに、興奮を押し殺した声。歌詞は英語っぽい。所々聴き取れる単語があるけど、意味を理解するには僕の英語力は低すぎる。辛うじて聴き取れた単語で意味がわかるのはこれのみ……。


『ハイになろうぜ!』


 そして伴奏が激しくなる。ギターやベースが入り乱れ、さながらパーティ会場のようなお祭り騒ぎになる。男声ボーカルも興奮をついに抑えきれなくなったみたいで声のボリュームが上がり、叫ぶように歌っている。パーティ会場で飛び跳ねているボーカルの姿が容易に想像できる。


『ハイになろうぜ!』


 いつの間にか僕も音楽にのっていた。

 ボーカルに合わせて口ずさむ。


 軽快なドラムがパーティを盛り上げる。かつて栄華を誇っていたというクラブやディスコの興奮と熱き血潮が僕の耳から入ってきて脳を揺さぶる。感情をたぎらせる。呼吸が激しくなる。ああ、こんなにも音楽で感情を動かされるなんて! ここでの合言葉は一つ!


ハイになろうぜレッツ・ゴー・ハイ!』


 そうしてあっという間に音楽は終わり、余韻を残しながらボリュームが落ちていきやがて完全に聴こえなくなった。部屋は静寂に包まれる。パーティは終わった。ただ一つの謎を残して。


 モニターには『C』の一文字が表示されていた。

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