第23話 肉声放送を聞いた青年の選択

 のぞき窓のすぐ外。上から降ってきた誰かと一瞬目が合った。


 声をかける間もなく彼は大空を舞い、儚く散っていった。


 見渡す世界に天まで伸びる絶望が無数に伸びていて。


 荒れた大地に無数の死体。しわ寄せの犠牲者。


 彼らは本当に使えない人材だったのか?

 うそだろと呟く声はしわがれて。

 信じていた世界に裏切られ。

 臭気が思考を腐らせる。

 みんな死んだのか?


 翼はもげて、ただ地に堕ちていくのみ。

 会社の人達も?


 翼は死んで、夢を見ることも放棄した。

 有名人も?


 翼は病んで、それは翼にうつり感染す。

 友達も?


 翼は希望で、間もなくそれは絶望する。

 あは。


 翼は未来へ、舞い踊る青空には核の雲。

 死。


 翼は象徴で、平和を願った鳩は何処どこへ。


 翼は可能性、それを奪うのは同じヒト。

 

 ここは揺り籠なんかじゃない。

 天まで届く監獄だ。

 

「俺にもさ……」と独り言。「夢があったんだけどなぁ……」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る