第16話 武骨な希望
ういいいいぃぃぃぃぃぃぃん。
Bの扉が開いた。
「土門さーんっ!」叫び声に、反応はなし。「あれ? いないのかな?」
私はすぐに液晶を置いて駆けだした。土門さんがいる筈の右の部屋へ。扉を開ける。
「あれ……うそ」そこは誰もいない寝室。間髪入れずに左の部屋。扉を開ける。
「……………………」
誰もいない。もう、どうしていないの? 土門さんはどこ?
左の部屋、そこは右の部屋である寝室そっくり。そして二つあるシングルベッドの片方、ぴしっと綺麗に敷かれたシーツの上に部屋の照明をきらりと反射するものが置かれていた。
「……これは」
鍵だ。ストラップなどはついていない。どこかの部屋の鍵かな?
「あ……」
もしかしてCの扉の先? 二回目に開いたとき、咲岡さんが入って扉は閉まってしまった。その前、一回目に開いたとき鍵がかかって開かない扉があった。あと、咲岡さんが食堂を調べた時、鍵のついた宝石箱があったと言っていた。
ひとまず鍵を持って書斎に戻る。そして液晶端末を拾いあげ、先程の続きをする。
『26P』。
一四文字のアルファベット。ここから八文字除外して六文字にする。
様々な情報が私の頭を駆け巡る。液晶端末と真正面に向かい合う。もう、アンダーバーのチカチカなんて気にならない。学校のあいつらみたいに同じことしかできない無能。私は違う、私は選ばれたんだ。それを今、見せてあげる。
まず、今さっきわかった『26P』のもう一つの意味について。
これはほんとに偶然。紙に書いたとき、『2』がそう見えた。もうちょっと丸みを帯びていたらわからなかったと思う。字が汚いからわかったようなもので、今だけ自分の字の汚さに感謝する。『2』がそう見えたら、次の『6』はもうそうにしか見えなくなった。そして『P』。即ち……。
『26P』改め、『ZbP』。これが『26P』のもう一つの意味。
次に、一四文字のアルファベットについて。
土門さんが言っていた本の二六ページを開く。ページを開いたら、『26P』を『ZbP』に変換する。そして……。
この本は四二三ページあって、内容は探偵小説(内容はどうでもいいんだけど)。二六ページには例のアルファベット。その前後のページはしっかり話が繋がっている。当然、アルファベットは小説とは無関係。つまり、二六ページは本来存在しないページ。つまり、『26P』はいらない……『ZbP』はいらない!
ZPCbIbPRCZbLPE
ここから、『Z』『b』『P』を除くと……。
私は残った六文字(パスワードの文字数とピッタリ!)を液晶端末に入力していく。
CIRCLE OK! Completed.
「やったあ!」私は大きくガッツポーズ。
The lock is released soon.
「……?」和訳すると『ロックはすぐに解除される』? 何のことかさっぱりわからなかった。
*
「うおっ!?」自分の素っ頓狂な声に驚く。
突然だった。突然、俺の右手首を拘束していた手錠が解かれたのだ。時間感覚が麻痺しているので孤立してからどのくらい時間が経っているのかわからないが、すごく長い時間が経ったように感じる。身体が疲労を訴えてくる。
とりあえず、大きく伸びをする。こり固まった右腕に新鮮な血液が流れるのがわかる。そして部屋を出た。向かいにまだ調べていない部屋。まずはこっちを……。
「…………ん?」
その時、俺はチラッと左を見た。その先にはBの扉があって今扉は開かれている。書斎がある筈なのだが、何だか違和感を覚える。俺はすぐに書斎の方へ行く。
書斎に入って気づいた。
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