第3話 「あのさ――」

 寝室。入って左にユニットバス。奥にシングルベッドが二つ。不気味な程静かなのはわかるとして、妙な閉塞感を覚えた。寝室なのに、窓がないからだ。


 部屋を照らす照明が無人の部屋をやや控えめに照らしている。ちなみに部屋の電気ははじめから点いていた。


「成程。寝室か」


「誰か使ってるんですかね?」


「いや、それはないだろう。生活感が全くない」


 改めて部屋を見渡す。隅に置かれた冷蔵庫の中は空だった。手を入れてみると冷たい空気が流れてくる。壁に掛けられた田園風景の絵にも不自然な点は見られない。


「ユニットバスも使われた形跡がありません」


 美輪ちゃんがひょっこりユニットバスから顔を出して言った。土門はベッドを調べている。


「うーん……」


 訂正。土門はシーツの匂いを嗅いでいる。


「土門、何やってんの?」


「いや、誰か使ったのなら匂いが残っていると思ってな」


「……まあ、そりゃそうかもしれないけどさ」


 普通、そんなことするか? 美輪ちゃんが見てなかったのがせめてもの救いだ。


 どうしよう? もう一つの扉を調べてみようか。そちらを調べてもう一度戻ってきてもいいんじゃないか。何か気づくかもしれないし。


「あのさ――」


 と、考えを口にしようとした時だった。


 ブーーーーーーーーブーーーーーーーーブーーーーーーーー。


「……? 何の音だ?」


「え? え? なになに?」


 駆け出す美輪ちゃん。


「この音……ブザーか?」


「うわわあああぁぁぁぁ!」


 廊下から甲高い声。


「大変大変!」


「どうした美輪ちゃん!?」


「さては、他の扉が開いたのか?」


「違うよ! その逆!」


「逆!?」


「さっき開いた扉が閉まっていってるよ! 早く早く!」

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