第3話 爆音の余波

家に帰ると、さっき5限の時間に聞いた爆音のことがローカルニュースでやっていた。


「えー、本日の2時ごろ、福岡県福岡市周辺で何か大きな音が聞こえたという通報が200件以上相次ぎ、警察が音の原因を調べる事態となりました。周辺住民によると、雷か何かが真上に落ちて来たような、爆音と言ってもいい程のとても大きな音だった模様で、ネット上では、北朝鮮のミサイルでは、テロではといった憶測が飛び交い、一次騒然となりました。現在、自衛隊と警察が協力して確認作業を進めており、音の原因を調査中です。以上、今日のニュースでした。」



あの音は、かなりの広範囲で聞かれたらしい。


耳をつんざくような、凄まじい音だった。


夕飯の時も、その話題で持ちきりだった。

母が言う。

「輝樹!あの音聞こえたでしょ?!すごい音だったわよね、バリバリって感じで。」


父も言う。

「その音なら俺も聞いたぞ。仕事で福岡市内から出てたんだが、びっくりして窓から外を眺めちゃったよ。」


今日の夕飯はハンバーグだった。

かなり手が込んでいて、ソースも自作らしかった。


珍しいこともあるもんだなと思っていると、2人は真面目な顔つきになり、父が言った。


「輝樹…最近学校どうだ?」


「え…?」


意表を突かれ、思わず間抜けな声を出してしまう。


「学校は楽しいか?」


何でそんなことをいきなり聞いてくるんだろう。別に、学校なんて、行きさえしてればいいじゃないか。


「別に、普通だよ」


そう言うと、父は

「そうか…」

と呟き、それっきり特に学校のことには触れずに夕飯を食べ終えた。


ニュースでは、またあの爆音のことを言っていた。


音の話題で盛り上がれるなんて、日本って本当に平和なんだな。


自分の生まれた国を意識したのは、これが初めてなんじゃないか。




今日は、5月1日火曜日。


早く寝たいが、明日のこともある。


明日は、あの不思議な部屋の女の子に『逃亡』を読み終わるように言われた期限だからだ。


読み終わったというか、読み終わってないというか。


プロローグしかない上に、その内容に従っても何も起きなかったのだから、仕方がない。


明日こそ、何か起きるのだろうか。



ベッドにもぐり、部屋の電気を消す。


明日が来るのが、久しぶりに楽しみに感じられた。

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