第5話ハイスペック

俺は、自分でもハイスペックだと思う

だって、大体のことは皆の中で1番よく出来るから。

授業を聞かなくても満点可能。

運動はいつも皆の手本。

当然人望が厚く学級委員も務めた。

こんなハイスペック、なかなかいないだろ?

へへ、褒められるのは嬉しいぜ。


…なんて言って、胸の痛みを無視した


…俺は人気者だった。

いつも皆の輪の中心にいた。

皆とバカ騒ぎする時間が楽しくて仕方なかった。

あーあ、なのに。


…どこで間違えたんだ?


なんでコイツは俺に掴みかかってる?


あれ?


おかしいな。


ハイスペックな俺がどうして?


なんで、ハイスペックなのに。


身体が、動かない?


避けろよ、俺。


この程度避けられるだろ?


なぁ、ハイスペック……


「いい加減にしろよ!」


鈍い痛み?


あれ?あれれ。


何やってんだ、俺。


「いつもいつもお前は俺達を見下して!偉そうに!」


…………………あ、あれ。


「そうよ!いつも貴方のせいで私たちは劣等生に見られるのよ!」


「あっちにもこっちにもいい顔して!」


…あ、あああ、


「よせよ。所詮コイツはいい子だから俺達の気持ちなんてわかんねえよ」


……あ、ああああああ、


いい子?いい子、いい子?


違う、俺は!


ハイスペックで、いい子じゃねえ!


いい子は、褒め言葉の筈なのに。


なんでこんなに苦しいんだ。


ハイスペックなのに、知らない。


分からない、嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ。


知りたい、知らないことなんてつくりたくない!


…でも、俺は。


ハイスペックだからな!


いつものようにニカッって笑った。


「おう!分かんねえ!」


「…はぁ」


呆れたように皆が離れていく。


…あー、ハイスペックな俺は。


実は無力なのかな。


まあ、そんなことはないな。


否、そんなことがあってたまるかよ。


人が無力だったら戦争は起きねえ。


平和に暮らしてる筈だ。


泣くなよ、間違っても。


俺は周りとは違うんだ!


絶対にな!


どっかの悲劇のヒロインぶった奴とは違うんだよ!


俺はハイスペックだからな!


絶対にロースペックなわけない!


だから、だから、だから。


「離れていかないで…」





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