第2話 思い出たち

あれからそう時間は経っていないが、僕の中では目まぐるしいほどの時間が経ったように思えた。僕は早くこの時間から抜け出したいのに、時間がそれを許してはくれない。未だここに僕を縛りつけようとしているように感じた。

ふと部屋を見渡した。この部屋に来たのはまだ2ヶ月前くらいだから正直思い入れなどさほどなく、情もわかないが、この部屋に置いてある物たちにはどれも沢山の思い出が詰まっていた。誕生日にもらったもの、クリスマスにもらったもの、初デートで一緒に撮った写真、お揃いで買った指輪。他にも沢山のものが、僕の目に足を踏み入れてきた。それらを見渡していると、ふとまた涙が込み上げてきた。付き合ったのはたった1年半。それでも、こんなにも沢山の思い出を僕らは積み重ねてきていたんだと、急にその重さに押し潰されそうになった。積み重ねた思い出の大切さに、涙が止まらなかった。どうして、どうしてと、また何度も何度も繰り返した。

思い出を振り返るのは辛かったが、振り返るのをやめたところで今のこのやるせない気持ちはどうやっても抑えられる気がしなかった。なぜか僕はそこで、それならいっそ一つずつゆっくりと思い出を掘り返していこうと思った。辛い気持ちに蓋をする選択ではなく、辛い気持ちに拍車をかけるような、正直自分でも訳が分からない選択を取ってしまった。一体この後僕はどうなってしまうんだろう。おかしな気でも起こしたりしないだろうか。そんな不毛な自問自答もありつつ、僕は一つ一つ思い出をなぞる旅に出かけた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

今までありがとう うえさま @244photo

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ