4.いつもの
フィルムだからかなり古い、というわけではないようだ。
最近はなかなかお目にかからないアナログなフィルムの写真だったから、それなりに前のモノかと思ってしまっていたが、よくよく見れば、スーツの形も、奥に映り込んでいる乗用車の形も、さほど古くはない。
「マスター……これ……」
雅巳も同じコトを考えたようだ。
俺はため息で返すしかなかった。
「なになに、なんかマジでヤバ目なのかい? ヤクザの抗争とかそういうノリなのかよ、これ」
不安げな顔で身を乗り出してくる涼に、どう説明すべきかと、腕を組んで背もたれに背を預けた。
「な、雅巳はやっぱ、コレはアレ関係だと思うか?」
目配せして、具体的には出さずに訊いてみる。
「……だねぇ。で、水希さん……コレ、SNSにアップして、どうなったんです? いわゆる炎上案件になっちゃったとか、そういう?」
ああ、と軽く首を傾げて、乗り出した身体を戻して座り直すと、眉を寄せた。
「いっそそうだったら、俺としてはイイ売名行為にもなったわけよ。どころがどっこい、アカウントごとざっくりBANよ」
肩を竦めて、はっは~と自虐的に笑っている。
どうやらアカウント削除されたようだ。
「運営に問い合わせしようかと思ってたところに、イタズラ電話が鳴り止まなくなるわ、大量のメールで受信箱が埋まるわ……それどころじゃなくなってな」
あらら、と眉尻下げて聞いていた雅巳だったが、それでか~、とぽつり漏らした。
げっそり顔の理由に合点がいったらしい。
「その上、家も割れたっぽくてな、うろうろしてるんだ、その、写真の、怪人に対する正義の味方っぽいのがよ。まるで俺が怪人みたいやん? こいつはなんか、変な宗教か何かの揉め事だったんだろかってなって、来てみたわけ」
まぁ、確かにある種の宗教とも言えそうだ。
「んんと、たぶん、アカウントの復活とかは無理だと思うんですよ。なので、依頼としては、こいつらを追い払って片付けばいい、ってとこですか? 水希さん」
にっこり笑って雅巳は仕事を請け負った。
「マスターも駆り出すから、人件費追加してもいいですよねぇ?」
はいぃ?
俺と涼は同時に変な声をあげて、雅巳を凝視した。
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