3.写真

 激しい動きを写したようでブレてはいるが、見た感じでは、人狼っぽい。

 狼のような風貌、獣の手足が破れた服から生えている。

「特撮の怪人ってよりは……単に、その、いわゆる異種とか異能とか、そういうのっぽくないすか……?」

 控えめにそっと雅巳が言う。

「いやいやいや、そんなコトない、あれ、都市伝説だろ?」

 大きくかぶりを振って涼は苦笑した。

 冗談好きだったんだ?と信じられないと言いそうな顔で俺らを見つめる。

「こういう仕事してると、そう解釈しないと割り切れないコトもあるんですよ」

 あはは、と軽い声で相手に合わせると、ちらりと俺に視線をくれて無言で、合わせろと瞬きをした。

 ん、と頷いて調子を合わせる。

「ちょいと拝借」

 無造作にテーブルに並べられた数枚の写真を手元に引き寄せると、俺と雅巳は頭を寄せて、じ、と改めて写真を凝視した。


 ひとりは獣人現象を起こした人狼、そして、その相手をしているのは数人の、見た目ではごく普通の人間のようだった。

 大振りの十字架や聖水と思われる水が入ったペットボトル───ここらが実に現代らしいが───そんな品々を手にして闘っているひとコマだった。


 時系列順に並べられないかと、いったん全部広げてみてから、さて、と少し離れて見る。

「これと、これ、まだ顔に人間ぽさが残ってない?」

 こそりと雅巳が呟く。

「となると、こいつとこいつが、いちばん服が破れきった感じだし、相手もだいぶぼろぼろになってるな」

 言いながら、写真を並べていく。

 その様子に、涼ががさごそと何か取り出した。

「言えよ、ネガ見りゃ順番わかんだからよ」

 ネガをこちらへ放るように投げ、慌てて雅巳が両手で受け止めた。

 現像された三十六枚撮りのフィルムが、六コマごとに切断されシートに収められている。広げて、天井の明かりに透かすが、ネガの見方に慣れていないと、写真と合わせるのも案外難しいだろう。

「てか、涼が最初から並べて渡せばよかったんだろうが」

 雅巳の手からネガを取り上げ、写真を添えてテーブルの上を滑らせて返す。

「ごもっとも……ほれ」

 ささっと簡単に写真を並べ直すと、またこちらへと押し返す。

 再び雅巳と覗き込み、他に何かないかと目を凝らした。


「……なぁ、マスター……これ、普通の人間じゃないんじゃあ……?」

 雅巳が指差したのは、人狼ぽい方ではなく、ごくごく普通そうなジャンパーにジーンズ姿の男だった。

「ほらここ。手先周りが発光してるように見えるんだけども」

 確かにうっすらと火花のようなモノが手先を覆っている。

「動きを追うとさぁ……これ、かなり狼姿の方が追い詰められていってるよね。最後の見ると、逃げようとしてるみたいだし」


 もしかすると……。


 俺の脳裏に、ひとりの男の顔が浮かんだ。

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