Episode:Ⅳ 不穏

しとしとと降る雨の中、彼は傘を差す訳でもなく、かといって何処かに雨宿りする訳でもなく、薄暗い街の中を歩いていた。

漆黒のマフラーとコート、手を覆う手袋に肩に掛けた刀。長い白銀の頭髪が色白の顔を隠し、身に纏う雰囲気は冷たく他者を寄せ付けぬ鋭利さを纏っていた。


「……あ゙?」


彼はふと伏せていた誰かに呼ばれたかのように顔を上げて、機嫌の悪そうな声を上げるが誰も応える者は居ない。

束の間きょろっと辺りを見渡して小さく苛立たしげに小さな舌打ちをしてまた顔を伏せて歩き出した──。

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