第38話 1月① テロ、再び

 地球暦で1月後半、ブレードは二人の部下と共に惑星スカーレットの建艦ドッグに忍び込んでいた。ネットワークへのハッキングによる事前の下調べで最も警備が手薄だと判断した建艦ドッグだ。この建艦ドッグは小型の武装宇宙船を建造する施設で、ブレード達にとっては、盗めれば小型でも大型でも関係なかった。


 ブレードを含めた三人は光学迷彩の装束とステルスセンサーで、簡単には侵入したと見破られない装備で忍び込んでいる。アンソニーとパティの仇討ちのために準備に準備を重ねてきたのだ。


「よし、あれを奪うぞ」ブレードは脳波によるテレパシーを使って部下に伝える。テレパシーキットもこの日のためにブレード自ら開発したのだ。テレパシーキットを頭に装着していると、同じくテレパシーキットを装着した他人に対して、脳波の波形によって寸分の誤差なく考えを伝えることができる。しかも、無線のように会話内容が傍受されない優れものだ。


 ブレードが強奪を指示したのは、三人乗りの武装宇宙船だ。小型ながら、長距離の空間跳躍が何度も可能であり、簡単な武装も備え、武器や魔法による攻撃に対しても重装甲で耐えられる優れものだ。


 三人は手際良くその宇宙船の元へ行き、部下の一人が使える、鍵によるロックを外せる魔法でロックを解いた。三人はサッと宇宙船に乗り込み、機体を空間跳躍モードに設定する。目的地は言うまでもなくナナと聡吾がいる地球だ。すると、宇宙船はゴウゴウとうなり声を上げた。


「誰だ、そこにいるのは!?」警備員が気づき、緊急警報を鳴らす。


 だが、時すでに遅し。緊急警報がけたたましく鳴り響く中で、宇宙船はフッとその場から消えた。


 宇宙船強奪から10分以内のスピードで、惑星スカーレットの警察と軍は協調して緊急会議を開き、今回の宇宙船強奪はブレード率いる快楽天下による犯行だと結論づけた。また、ナナと聡吾への仇討ちのためだとも推測した。そして、宇宙警察にその旨を報告し、アルエとナナにも連絡した。幸い、今のところナナと聡吾は無事なようだ。突然奇襲するのではなく、用意周到なブレードの性格からして、奇襲対象の場所に結界を張るなどの準備を施しているのだろう。


 惑星スカーレットの警察と軍から宇宙船強奪の報を聞いたアルエは、自分も地球へ向かうと言いだし、軍が用意した宇宙船で地球に向かった。


(ナナさんも聡吾君も無事でいてくれよ!)アルエは心の中で祈りと共に叫んだ。

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