日没
無人の改札を駆け抜けた時にはもう、列車はホームに入っていた。
慌てて跨線橋を渡り乗り込むと、横長の席の端から彼女が小さく手を上げる。
列車が動き出す。
程なくして通りかかった車掌に声を掛け、終点までの切符を買った。
初めは混みあっていた車内も少しずつ人が減り、日が落ちる頃には片手で数える程になっていた。
彼女は僕の隣に席を移し、どこか眠たそうな声でとりとめもない話を続けている。
昔の友人のこと。
音楽の趣味のこと。
内海のそばを小さな列車が走るこの地方を、いつか旅してみたかった、とも。
終点の一つ前の駅で、僕は思い出した。
彼女とこんなにも気安く話したことは、彼女が生きていた内には一度もなかった、と。
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