〈6〉



 来週の課外授業に向け、計画は着々と進行しているらしい。


 時野谷も水宮も、なんだかんだと言いながら協力してくれている。

 単純に暇つぶしや興味本位というのもあるが、わずかな反抗心――それが一番の理由かもしれない。

 一から十までを学園が定めるルール。そのタブーにちょっとでも抗ってやろうかという気持ちが生じるのは無理からぬ事だ。

 少なくとも俺はそうだ。

 金儲け? 馬鹿言っちゃイカンよ。俺がそんな下賎げせんな物に心動かされるとでも? ワハハハハ。


 てな訳で、反体制志向の義憤ぎふんによりった俺は計画の仔細しさいを詰めようと、昼休みになった途端に教室を飛び出そうとする羽佐間の坊主頭をべしっと引き掴んだ。


「でぇぇい! やめろ!」

「ちょいツラ貸せ」

「何だよ? あの計画の事か?」

「お前が言ってた、その危険な橋ってのがどうにも気になってな。詳しく知りたい」

「それはまだ、明かせないつったろ?」

「いや、それ如何いかんでどれほどの大事になるか……その予測がつかなきゃ、取り返しの付かない事になんだろうが」


 俺達は声のトーンを落としてやり取りする。


「取り返しがつかないって何だ?」

「だからよ、下手を打たない為にだな――」


 羽佐間が思案気な眼を見せたその時、俺達の元に時野谷もやって来た。


「どうしたの二人とも、お昼、学食行かないの?」

「時野谷、ちょっと俺ら先に便所行ってくるわ。悪いんだけど席取っておいてくれないか」

「うん。いいけど」

「すまん、頼む」


 俺は何事か言おうとしている羽佐間の頭蓋ずがいをそのまま鷲掴わしづかみにして、力任せに廊下を引っ張っていく。

 頭を反らすようにした奇妙な体勢の羽佐間を引きずっていくそんな俺を、小首をかしげて見送る時野谷だった。



 わざわざに、教室棟から離れた人の少ないトイレまでやって来た俺達。


「いててっ。首の骨曲がったぞ、この握力ゴリラ」

「本当に曲がってたらそんなぴんぴんしてねえよ」

「で、何なんだよ? こんなトコまで引っ張り込みやがって」

「一応の用心だ」


 俺は囁き声でそう漏らす。

 それに触発されて、羽佐間もそれらしい小声で返してくる。


「用心ってお前、だからってトイレの個室に男二人で入るってどういう状況よ?」

「密談の基本形だろうが」

「いや、何かお前さー、その体格のせいなのか、マジで危機感を覚えるんだが」

「は?」

「だから、お前って……本当にソッチの気ないよな?」

「何だそりゃ? 仮に俺がソッチだったとしてもな、相手ぐらい選ぶわタコ。自意識過剰かお前は」

「おい? その返しが既におかしくねーか?」

「大体な、相手が男なら誰でもいいって訳ないだろ。逆にお前だって、相手が女だったら誰でもいい訳ねえんだから」

「いや、何? なんでお前、ソッチの事についてそんな熱く語ってんの? やめて、マジやめて」 

「そもそも、ここが男子便所だからってそんな……――ま、その界隈で有名な隠語であるのは事実だが」

「マジやめろ! てか俺、この空間に一秒でも居たくねーぞ!」

「大声出すなこら。折角、人目を避けるための場所だってのに」

「人目を避けて何する気だ⁉ た、助けてっ……誰か助けてぇー!」

「だから騒ぐな!」


 ひどい勘違いをしている羽佐間をどうにかこうにか押さえ込んで大人しくさせる。

 暴れんなよ……暴れんな……。


 羽佐間の奴、全く以って何をトチ狂ってやがるのか。

 そりゃ確かにこの学園に来て、そして時野谷という地上の天使に出会って、俺の人生の指針は大きく揺り動いたさ。

 ホントもう相手の性別がどうだったとして、何の問題ですか? 何の問題もないね――てな具合で俺の思考回路は上書きされたさ。

 まあそれは今、全然関係ない話か。


「茶番はもういいとして、話の続きだ」

「いや――お前に対する疑惑が払拭ふっしょくされないままなんだが?」

「だから真面目な話だ。くだんのその危ない橋ってのはどうなんだ? それの所為せいで、俺達だけで処理し切れないような事態におちいるとかいう、まずい結果にならねえだろうな?」


 切り替えて、俺は懸念事項だったそれらを改めて問いただす。


「俺達だけっつーか、玄田よ、既にそこんトコ勘違いしてるぜお前」

「どういう意味だ?」

「分かってねーな。こういうのはさ、何て言うか、相応の金が動くところに相応の組織ありきってヤツ? そーいうもんだぜ」


 何故かしたり顔でそんな事を語る羽佐間。


「つまり事は既に俺らだけの範疇はんちゅうじゃなく……後ろ盾バックが付いてる――スポンサーみたいのが居るって話なのか」

「そう、すばりそれ」

「言っていた学園の先輩方って連中か」

「まあな。ただ純粋に先輩つっても、中等部の連中もいるから色々と複雑だぜ」


 この学園の特殊な形態故、俺達より歳下な「先輩」が居ても珍しくはないが、つまりそういうくくりに拘泥こうでいされない集まりが存在してるという話らしい。


「という事はこの計画の発案もお前って訳じゃないのか」

「んー、どう説明すっかな。偶然にも今回のその情報をつかんだのは水宮本人なのは間違いないぜ。それをたまたま教えて貰った俺が、真っ先にその情報を先輩方に売り込んだってワケ」

「それで、その先輩連中が図面を引いたと」

「発案つーか、大元はな。けど詳細は俺に一任してくれてよ。つまり全権を俺が握ってるようなもんよ」

「感心できねえ話の流れだな」

「何が?」

「その先輩方とかいうの、おいしい所だけ持ち去って俺らに貧乏くじをひかせる算段じゃないのか」


 そんな、有りがちな事の顛末てんまつを口にしてみた。


「今期に入学したばかりのお前に、そこまでの計画を任せるかよ。面倒な事になったら切り捨てようって魂胆こんたんじゃないのか」


 事実、そんな気がしてならない。


「あの人達はそんなんじゃねーってば」


 だが、羽佐間が意想外な真面目さで異を唱える。


「確かに悪事には長けてるんだけど、でもそれは学園側に対してってだけらしい。たちの悪い連中ってワケでもねーそうだ。特に同じ生徒である俺達にとってはさ」


 にべもなく、そう断言する羽佐間。


「知ってるか? 一部の生徒はな、あの人達の事を『革命軍レジスタンス』だなんて呼んでんだぜ」

「学園に楯突くって意味合いでか」

「そんなトコ。お前もさ、この学園の空気っつーの? そういうのはもう分かってるだろ。一応、生徒達は表向きは従順だけどよ、その実どう思ってるのかもろに雰囲気に出てるって感がさ」

「まあな。どんな鈍感な人間だって直ぐにも気づく」


 仕方がない背景があるとは言え、多くの生徒達はこの学園という存在そのものを快く思ってない。


「そんな生徒達の代弁者みたいなさ、あの人達はそんな位置に居んのよ」

「只の小遣い稼ぎを、組織的に行う集団ってだけじゃないと?」

「あの人達にとっては二の次さ。本命は、学園側に泥をる事じゃねーのかな」

「……興味深くはあるなその話」


 高慢ちきな連中のその鼻っ柱を折ろうという――そういう気概は多くが持つだろう。

 だがその先輩方という連中はそれを組織だって行うという。

 なるほど、革命軍な訳だ。――生徒達の反抗心にって立つ。


「なんなら玄田、お前も会ってみるか? その人達に直接」


 黙して思案していた俺を見て、羽佐間がそう提案する。


「おもしろそうだ」


 俺は素直にそう述べた。


「お前ならそう言うんじゃねーかと思ったぜ。じゃあ紹介してやるよ。遠影さんに」

「遠影?」

「ああ。高等部三年の遠影とおかげ朔馬さくまさん――実質的にリーダーな人だ」

「正式なリーダーじゃないのか」

「さあな、本人がそう言ってるんだ。あくまで自分は形式上だって」

「妙な人なんだな、その遠影先輩って」


 だが、悪くない話だ。

 俺も顔も知れない人間の手先として動くのは納得行かない。

 直接、どういう為人ひととなりかを拝んでおくのは都合良い。


「分かった、頼んでみる。じゃあ、話はそれで済んだな。マジにこのむさ苦しい空間から早く出たいぜ。食堂に時野谷も待たせてんだから」

「そうだ、時野谷だ――羽佐間、お前なんで態々わざわざに時野谷までも巻き込んだ?」


 羽佐間の言葉で、確認しておきたいその一番の部分を思い返した。


「何でって……?」

「水宮はまあ、情報の発信源として理解できる。成績も色々とやばそうだからな。俺も不本意ながらそういう分野に向いてると思われてるのは知ってる。――本当に不本意ながらな。だが時野谷はこういう事にまるで向いてないだろうに。大人しいし、どちらかと言えば優等生だ。あまり目立つ事や問題を起こす事には不向きだろ」

「んー……」


 その坊主頭をガシガシと掻いて、羽佐間は複雑そうな顔色になる。

 悪だくみをする仲間としては、時野谷はあまりにも真面目というか健全というか――ひいてはこの手の事に不便なのだ。


「なんつーかさ、時野谷ってホラあの見た目のせいなのか、なんかもろいっつーか……危ういんだよな……」


 そう不明瞭に言葉を吐き出す羽佐間。


「なら余計、こういう事に巻き込むべきじゃないだろ」

「いや、違くて。あいつさ、若干ここで浮いてるトコあんだろ? 見た目もだけど、性格的にも控え目すぎるってーか」

「確かに……」

「だからよ、巻き込んでどうのこうのより、巻き込まないで――蚊帳かやの外に置く方があいつ傷つくんじゃねーかと思っちまって。仲間外れにされる方がより嫌なんじゃって気がしてよ」


 またまた意想外に、羽佐間は真剣な顔してそんな事を述べた。


 これには俺もちょっと驚く。

 どうせ大した理由もないんだろうと見していたが、羽佐間もあの時野谷の危うい雰囲気に思う所があったらしい。

 そして正に、人に気を遣い過ぎていつも遠慮がちな時野谷は、往々おうおうにして他人と打ち解ける事に不得手だ。

 あの見た目も相って、そんな彼だから人間関係を構築するのに手間取っている。

 かなり前からこの学園で暮らしているらしいが、察するにしんから打ち解けた人間というのは俺達ぐらいだろう。

 あの霧島凛の襲撃イジメから身をていしてかばったおかげで、俺は時野谷と互い気を許せるまでになった。

 ついでに気安いこの羽佐間もそこに加わって、最近はやけに楽しくやれている。


「一応、お前なりに気を遣ったって事なのか。わかった、その事は納得した」


 羽佐間め、いい加減な奴と思っていたがそういう気遣いがちゃんと出来る人間だったとは。


「本題の――この計画案についてだが、それはその遠影先輩とやらに直接いた方が手っ取り早そうだ」

「じゃあもう、話はこれでいいか? 割とマジで気分悪くなってきた」


 そんなこんなで、密談を終えて俺達は個室からづる。


 その際、手洗い場にいた中等部の制服を着た男子生徒がぎょっとしたように俺達を振り返る。

 心無しかげっそりしている羽佐間とどこか満足気な表情の俺。そんなこちらへ、まじまじと目を見開いて。


 これはまずいと、俺は一計を案じる。


 ここで俺達が極秘の話をしていた事を感付かれてはいけない。

 すっと俺はその男子生徒の真横に立ち、さりげなく肩を抱いて「興味……あるんか?」と耳元でささやいた。

 その生徒は首を千切ちぎれんばかりにぶんぶんと横に振ってから、転がるよう逃げて行った。


 うむ、これで良し。




















 羽佐間が言っていた先輩という人との顔合わせは、そう期間もなく実現した。

 駅構内から歓楽街へと入った間近にあるファストフード店、そこで件の遠影という人間が待っているらしい。


「――で、なんでお前が来てないんだよ?」


 スマホ片手に、人混みの中でそう悪態をく。

 駅を降りた直ぐのこの場所では、街に向かう人波でごったに揉まれてしまう。

 俺はその店を見上げながら足踏みをしている状態だ。


『だから、俺は色々と来週に向けて動かなきゃなんねーんだってば!』


 通話越しに、何故か非難がましい羽佐間がそうやってわめく。


「それは分かったが、俺はその遠影とかいう人の顔を知らないんだぞ? どうすりゃいいんだ」

『心配ねーって。一目で絶対この人だってピンと来るような容姿だからよ』

「お前な、『ともかくすごい美形』って――なんだその情報? 取り止めが無さ過ぎだろうが」

『だから! 一回その顔拝めば絶対に判別できるレベルなんだって! もう、なんつーか、別世界の人間? お話の中から飛び出してきたような王子様? ――マジそんな感じだから』

「いや、抽象的だって言ってんだよ。もっとこう確実な、具体的な特徴を教えてくれよ。どういう格好だとか、どういう体型だとか、特徴になるような情報を――」

『とんでもないすっげーぐらいのイケメンを探せ! それでまず間違いね―から!』

「あのな、さっきからお前、人の話聞いてるか? そんな雲を掴むような……――って、いたわ……」


 何気なく、本当に意識せず上を見上げた時、店の二階の窓に接したカウンターテーブルに座るひとりの人間に視点が固定された。

 そこには、椅子に斜めに座り、肘をついて自分の手元に視線を落としている絵画かいがの中から抜け出て来たような人物が居た。


「あれか……? いや――おい羽佐間、遠影って人は日本人じゃないのか? 髪も銀色だし、あんな容姿……」

『お! その人だその人! ほれみろ、やっぱり一発で分かったじゃねーか』


 得意げな声が電波を介してこっちに響く。

 鼻の穴を膨らませている羽佐間の顔が容易に頭に浮かぶが、いや待て待て――そもそも最初からその特徴的過ぎる容姿を言葉にしてくれりゃ、こんな掛け合いは必要なかったろうに。

 段取りの悪い奴だ。



 店内へと入り二階へと上がった俺は、その窓際のカウンターテーブルへと視線をやった。

 優雅という言葉がぴったりなよそおいの麗人れいじんが、長い足を組んで窓に対して体を横に向けている。

 片手で頬付ほおづき、空いたもう片方で少し斜めに置かれたテーブルの本をめくっていた。

 ハードカバーの分厚い書籍で、ページには文字が横書きで並んでいる。――日本語のじゃないらしい。


 視線を本から移し、彼の全身を観察する。

 羽佐間の「物語の中から抜け出てきた」というたとえに、成る程、的を射ていると感心する。

 確かに雰囲気と呼ぶべきか――彼を取り巻くその空気が、他とは隔絶かくぜつされた相違を見せている。

 その部分だけを切り取ったように、世界が違うと表現してよいだろう。

 そういうレベルで美形だ。


「遠影さんすか?」


 意を決して掛けた俺の声にその麗人が顔を上げて振り向く。

 目鼻だちのすっきりと整った、女性的な色気すらも感じられる見目姿。

 ひもで一本にわれた肩に突くくらいの長い髪も、垂れ目がちな二重の目許から覗く長い睫毛まつげも、そしてその宝石のような瞳も銀色だった。


「玄田くんかい?」


 意外と人懐っこい、柔和な笑みが花開いた。――そして完璧な日本語だ。一安心。


「どうも。羽佐間から、話は通ってますよね」

「うん、聞いてるとも」


 彼は座を正すようにし、隣の席へとこちらを促した。

 俺は会釈を返してから、下で買ってあったLサイズのコーラをその席に置く。 

 その後になって気づき、左右を軽く見渡した。


「お一人で?」

「今日は僕一人だよ。いや、基本的に僕一人と言った方がいいのかな」

いわく気な組織とうかがってたんすが」

「いかにもな風を予想してたかい? こう、影を落とした謎の人物達が、僕の左右に控えてるみたいな」


 そう言って彼はまた、さも可笑しそうに声を立てた。

 その見た目に反して――そしてイメージしていた反抗組織のリーダーという人物像とは掛け離れて、砕けた人だった。


「まあ追々おいおいに、他のメンバーとも顔を合わす機会があるよ。と言っても、そんな大層な期待はしないでね。僕らも君達と同じで一介の生徒に過ぎないんだから」 

「そりゃそうですよね」


 人伝ひとづてに聞いていた、学園に対する反抗組織というイメージを修正する。

 結局の所、彼らもお遊びの続き物と捉えた方がいいのか。

 まあこっちもそれほど物々しいイメージはしてなかった。

 しかしあれだ、薄暗い地下の倉庫ような場所で居並ぶ幹部構成員から値踏ねぶみされるような視線をびつつ、何事か難癖なんくせつけられる様な場面を想像していなかったかとただされたら、――これは素直に嘘だと認めよう。


 そんな事を内心でぼやきつつ、彼、遠影先輩の隣のカウンター席についた。


 すると遠影先輩は腰を降ろした俺を真横から薄い微笑で眺めてくる。

 若干身を乗り出すようにして、こちらにじっと視線を当てている。

 なんだろうか、ちょい距離が近いというか、パーソナルスペースというのものを越えてませんかね。


「な、なにか?」


 その綺麗な顔立ち故か、まるで年上の女性にそうされてる錯角を覚え、何やら無為むいにどぎまぎとしてしまう。


「いや、君が噂の玄田亮一くんかと思うと興味深くてね」

「噂の?」

「この学園で、あの凛ちゃんに比肩ひけんする実力の持ち主だとか」

「凛ちゃん? ……ああ、霧島の事ですか」


 その可愛らしい呼び方とあの凶悪無比な奴めの風貌ふうぼうとが始め合致せず、俺は言葉に詰まってしまった。


「うん、そう。凛ちゃん」

「霧島とは、もしかして親しいんですか? 口振りから察するにですけど」

「学年は違えど、僕も彼女もこの学園は長いからね。初等部からの付き合いになるから、旧知の間柄と言ってもいいかもしれない」

「そうなんですか」


 初等部――そんな幼い頃から彼らはこの学園に居るというのか。

 遠影先輩も、そして霧島も、そんな早い時期から発症していたとは。


「――なんていうのはウソだけど」

「え? 嘘?」

「初等部からの顔見知りっていうのは本当なんだけどね。でも彼女はああいう性格だから、本当に顔は知ってるって程度なんだ」

「……ああ、成る程っす」


 確かにあいつ、他人の事になんて興味無さげだよな。

 という事はあれか、霧島の奴、別に彼らの活動に参加してる訳ではないのか。

 つまりあいつは明確な理由も持たず単独で問題行動を引き起こしまくってると。ほんと、おっそろしい奴だ。


「でもね、驚いてるんだ」

「何をですか?」

「凛ちゃんと君の事だよ」


 俺は思わず眉をくもらせた。


「彼女がこれだけの期間、一生徒に固執こしつするっていうのはまれなんだ。これまでその標的に選ばれた生徒なんかはね、次の日にでも身心ともぽっきり折られちゃって大人しくなる。そりゃもう可哀相なくらいに。そうすると彼女の方も張り合いがないみたいに、もうその人間に興味を失くしちゃう」


 シャレにならん話だ。


「そんな彼女がここ二ヶ月、たった一人の生徒を追っかけてるっていうんだから、これはもう驚きだ。しかもその彼は、今期入学してきたばかりの能力者だという。学園のパワーバランスがここに来てくつがえされる事態だよ――玄田くんの存在は」


 嬉しくもないお話である。


「は、ははは……」


 乾いた笑みも出るわ。


 俺はその標的とやらからさっさと外れたいんだがね。

 つまりそうなるには可哀相なくらい大人しくならなきゃいかん訳か。

 ふざけんな。


「ま、噂とやらが良いもんじゃないのは知ってましたが」

「一般的には、そうとも言えるかも。でも僕らにとっては君は同士に近い感情を覚える相手だよ」


 図らずも俺が起こして騒ぎは彼らの活動と重なる訳か。

 というか俺は自分から騒ぎを始めた事は一度だってないぞ。

 いつだって、それこそ文字通り火を付けるのはあの霧島じゃねえか。

 自分自身でさえ、なんかもう当代切っての問題児の烙印らくいんを認めちゃってる節が出て来たよ。――まじかクソ。


 内心のそんな溜め息が表面に浮かびそうになるので、俺は無理して話題を変えた。


「先輩方のその集まり、正式名称とかはあるので?」

「周りは僕らを『革命軍』なんて呼ぶよ。ちょっと大仰おおぎょう過ぎるから、あまり僕らの間では浸透しんとうしてない呼び名だけど」


 またそう明るい声で笑う。


「正式名称か……。一応、僕らは、部活動と自称しているけれど」

「ぶ、部活?」


 出て来たその単語を思わず間抜けにすくい上げていた。


「そう、学園奉仕部なんて呼んでる――僕ら自身は」

「学園〝奉仕〟って……いやでも、やってる事は……」

「そうなんだ、真逆の活動だろう? つまりこれ、精一杯の皮肉なんだ。教師や警備隊の面々が、僕らに対して校則や校規という言葉をあてがうように、僕らも大人達に対してそういう皮肉をね」

「そりゃまた、どぎつい皮肉で」

「実は学園側には、ちゃんと申請もして認可されてるんだよ」

「――え⁉」

「もちろん嘘の活動内容を偽装してね。でもちゃんと長峰ヶ丘学園に『学園奉仕部』という部があるのは事実さ。その実態は……という裏だけど」


 また声を高らかに「あはは」と無邪気に笑う遠影先輩だ。

 端整なその顔をまるで子供のようにあどけなくしている。


 さりとて、ほんと皮肉が過ぎる内容だった。


 そしてそれを子供が悪戯を自慢するよう喋るこの人物。――少し、こちらのはかりかねる手合いだと思えた。

 能天気であるとか、考え無しの人物であるという訳では決してなさそうだ。

 それは彼の仕草や表情――節々ふしぶしから感じられる理知的な雰囲気がそう教えてくれる。

 俺が声を掛ける前までのあの風のない日の湖面のような物静かさと深さは、鮮烈な印象としてそれを物語っていた。


 つまり、今の彼の顔は決して本質ではない。

 ただ親しげでほがらかな先輩という役柄を演じてくれているという事だろうか。

 それが彼の処世術であるのか、あるいはその裏に何がしかのたくらみがあるのかどうか。


 ともかく、その場にまれそうになる自らを引き締めた。

 魅力的と表現していいのか、この人はその場に居合わせるだけで空気を我が物としてしまうような、引力――みたいなものがある。

 その容貌も含めて、なるほど人前で立ち振る舞える側という事らしい。

 はじめ彼は一介の生徒とそう自身を評したが、それすらも予防線のような物であると俺は勘繰かんぐっていた。


 そんな俺の心の内を読んだでもないだろうが、内々に警戒心をもたげさせていたのが顔に出ていたか、こちらの表情を見て遠影先輩は意外そうに片方の眉を少し持ち上げた。

 だが次の瞬間には何かを得心したような面持ちになり、うっすらとだがその微笑の色を塗り替える。


「さて、僕に訊きたい事があるそうだけど?」


 まるで先んじるよう、唐突にそう促した。

 ここは別に薄暗い地下倉庫でもなく、陽の差す明るい店内ではあるが、ちょっとそれらしい空気に変わった事を感じ取る。


 考えをまとめるよう、一拍置いてから俺は切り出した。


「先輩方は、つまりどの程度を目指してるんでしょう」

「どの程度というと?」

「その、活動の指針みたいな……そういう物はお持ちなんで」


 俺のその問いに、彼は軽く顎を突き上げて黙した。

 しかしそう幾許いくばくも間を置かず、首を横に傾けるようにしてこちらを注視する。


「僕らの具体的な活動内容が知りたいとか、そういう事かな?」

「いえ、そういうのは大体把握してます。ではなく、もっと根本的な大本の動機……とでも言えばいいんすかね」

「動機? ますますよく分からないな」


 まるで不自然さはないが、やはりどこかその調子に取りつくろった感を覚える。


「ぶっちゃけて言うと、先輩方は何かを成し遂げようと考えてるクチですか?」


 傾けていた首を戻し、また彼は沈黙した。


 成し遂げる――俺がそう言ったのは、まさに彼が成し遂げられる人物のように思えたからだ。

 まだ会って十数分しか経っていない。

 その上、その組織の全容を見た訳でもない。

 けれども俺は懸念けねんしていた。

 組織の実力などはそのトップにあらわれるという。

 故に彼と、彼に率いられたその組織とやらは、何かを確実に成し遂げられるだけの存在ではないかと思えてしまうのだ。


 もしこの人物がもっと分かり易い、反抗心と義憤ぎふんに燃えたぎったような人柄であったなら、俺はそんな懸念を覚える事はなかったろう。

 俺らの時分、そういう如何いかにもな大義やら正義やらにフラストレーションを混ぜ込めて乗っける輩――あるいはそういう活動を行っている自身に酔ってしまうような輩は多い。

 そういう手合いであったなら、俺はその「革命軍ごっこ」を安心して他人事ひとごとに応援する所存だ。


 だが彼ら――少なくともこの遠影という彼は、どこかそういう性状ではない。

 華やかな過程もドラマチックな経緯けいいにも執着せず、もしくはそれらすらもブラフとさせて、ただ閑寂かんじゃくとして結果のみを出すような人間な気がする。

 それこそ成しげてしまう程なのか。――その「ごっこ」を。



 長い沈黙だった。



 やおらに遠影先輩は口を開いた。


「玄田くん、君は人類の味方かい? それとも僕らの味方でありたいかい?」


 比喩ひゆでなく、本当に臓腑ぞうふが冷えた。

 自身の血流がさっと引いて体が冷たくなるのを感じた。


「……その問い掛けは……何すか? あまりにも、その、危なっかしい質問じゃ…」


 知らずと冷や汗が浮かんでいた。

 対する遠影先輩は、ひどく落ち着いて見えた。


 だが次の瞬間、彼は――

 ふっと息を漏らしたかと思うと相好そうごうを崩して笑い出した。


「あはははっ。ごめんごめん、今のも冗談。でも待っておくれ、君が悪いんだよ? そんな剣呑けんのんな目と言葉をこっちに向けるんだもの」


 子供みたいな瞳に立ち返って、彼はぽんとこちらの肩を叩いた。


「冗談……?」


 はぐらかされたのだろうか。

 そのあどけなさはあまりにも巧妙で、俺ではその真意を掴めない。


「でも玄田くん、君の懸念は理解できたよ。つまり僕らがやり過ぎないかを心配しているんだろう?」

「えっと……まあ、はい」

「うん、それは誰しもが思う事だ。実際僕らを支援してくれている生徒達も、僕らが本当に体制をくつがえすような事を狙っているのか、その点については疑って掛かっていると思う」

「それで、実際は――」

「言ったろう? 僕らも所詮しょせんは一生徒さ。この学園が無くなって困るのは、何よりも僕らなんだよ。そんな馬鹿げた妄想はいだかないよ」


 あっけらかんとした口振りでそう答えた遠影先輩。


「……ま、そりゃそうですよね」


 完全に納得した訳ではない。

 けど今の段階でこれ以上を詮索せんさくするのは愚策ぐさくだと思える。

 この人物を一朝一夕で組み伏せるのは不可能だろうと、それだけは学習する。

 だから俺は先程と同じ台詞を繰り返した。


「確かに、学園を横暴だとは誰しもが感じている。だけどそれで短絡的に『じゃあ、やっつけよう』とまで考える人間は少ないよ。僕らのつどいはある意味そういう考えを持つに至る生徒を抑制する機構でもあると、僕自身そう考えているんだ」

「抑制?」

「それをはっきり見えていた訳じゃないよ。ただ……僕らの年頃はさ、ほら、何でもできてしまうような万能感や、自分だけが特別だと思えてしまう事って、よくあるだろう? 普通の人間なら思うだけ、そこまでの話なんだろう。けど僕らの場合、幸か不幸かそれに説得力がともなってしまう病気なんだ」

「……異能の力……」

「そうなってくると、個人差はあれど無茶をやらかすような手合いが出てきてしまう。そして万能感はあれど、万能ではない彼らは下手を打つと……。同じ生徒――いや、単純にそれが誰であれ、僕はそういう不幸な人間を見たくない。そのための装置になっているとも考えてる」

「理解できる話です。つまり先輩方は俺達のそういう不満のけ口をになっている訳ですか。実際に馬鹿げた妄想を行動に移させないよう、学園側がお目こぼしをしてくれる境界を探りながら」

「繰り返すけど、別にそれを意図していた訳じゃないよ。でも結果的にね」

「ある意味で、学園奉仕部の面目躍如やくじょじゃないですか」

「ははは――そうなるね」


 さも可笑しそうに喉を鳴らしている。

 皮肉で付けた名称が瓢箪ひょうたんから駒な訳だが、別段その事は嫌そうでもない素振りだ。

 やはり彼らの目指す活動とは、お茶目で済ませられる程度の悪戯なのか。


「俺はまだ入ったばかりなんでよく知らないんですが……学園側が、そういう無茶な行動に出る不適格な生徒を実際に排除した事って、今まであるんですか?」

「どうだろうか。僕も学園生活は長いけど、の当たりにした事はないな」


 その形の良い顎を二本の指でなぞるようにして、くうを仰ぐ。


「ただ学園を卒業していった人から教えて貰った話では、学園設立当初は実際にクラスメイトが何の前触れもなく居なくなったり、その脳漿のうしょうで学園の廊下を汚した生徒がいたとか」


 こちらに向き直って、少しだけ薄気味悪い語り口でそう言葉を転がす。

 実力行使はあったという話か。

 脳漿を廊下にブチけたとはとんだ表現だ。――銃弾で頭を打ち抜かれたと言いたいんだろうが。


「けれど近年は、そういう素振りすらないらしい。……知ってるかい? 警備隊――有事の際の学園の私設部隊だけれども、彼らが持っている銃はただのこけおどしだそうだよ。本当にその引き金を僕らに向けていた事はないらしい。少なくともここ十数年来はね。何かの際に止む終えず実力行使する場合、テーザー銃って言うのかな? 電気ショックで失神させる器具を使うんだって。その場面なら、昔僕も見た事があるよ」


 複数本の+と-の電極がついたワイヤーを打ち込み、相手を感電させて行動力を奪うテーザー銃か。

 確かに、これ見よがしにたずさえている銃火器PDWの他に腰のホルスターにそういう物が必ずセットされてるのは俺も眼にしている。


「他にも、物凄く強力な麻酔ますい薬の一種で数秒もかからず昏倒こんとうさせてしまうようなのがあるって噂だよ。副作用として記憶障害を起こす程の。けれどやはりそんな代物を用意してるという事は、学園側も僕達を獣か何か程に軽視してる訳じゃないって話なんだろう」


 まあ、麻酔銃で昏睡ってのがまさに動物園の猛獣扱いだが。

 猟銃で駆除される野生の獣よりは、動物園の獣の方が扱いはマシって具合かね。


「どうしてここ十数年の内で、学園側は明確なその実力行使を行わないようになったんでしょうね」

「さすがに僕もそこまでは知らない。でも、うーん……もしかしたら学園側も少しずつ変わっていったのかもしれないね」

「変わっていった?」

「昔はそれこそ、特異体という存在の出現で混乱していたんだと思う。対処の仕方も強硬的にならざるを得ないぐらいに。けれど少しずつこちらの事情も判明してきて、扱いに変化が生じたとかじゃないかな」


 話では何度も聞いている初期の話、異能者にとっての暗黒期の話だ。


 世界が今のこの体勢に落ち着くまで、当時の異能者達はそれこそ中世の魔女狩り染みたむごい迫害を受けていたという。

 化け物のように扱われていたというが、正直、本当に化け物染みた存在であった方が救いがあっただろう。

 俺達異能者は全てが全て他者を圧倒できるだけの力を授かる訳ではない。

 それこそが酸鼻さんびたる結果を招いていたという。

 大衆は一部の悪魔的な力を持ち得た異能者を恐れ、区別もなくこちらを迫害――いや追滅しようとした。

 ただ少し人に出来ない事が出来るというだけで、後は他の人間と何ら変わりないような特異体も多かったはず

 故にその時期、多くが止むなく犯罪者集団に身を寄せていたという。

 またそんな中、力を持った手合いは人類と真っ向を切って衝突したともいう。

 それがさらに両者の対立の図式を深めたとも。


 そんな時代では、確かに学園側も容赦など出来なかったのだろうか。


「あるいは18年前のあの大災害、CケースoオブAアジア以来の世界情勢に起因しているのかな」


 〈Case of ASIA 〉――蟻の化け物達によってユーラシアの東半分が滅んだあの大災害だ。


「あの大災害があってからPD型親類種への対抗策として僕らが重宝されているけれど、つまり人類にとって脅威となる牙はPD種に対しても脅威となる。だからこそ、無闇むやみやたらと処分なんて出来ないとかかな」

「有効な駒は、手元に多く残しておきたいって心境でしょうかね」

「まあ、あの大災害から今日こんにちに至るまで、大したPD種は出現していないらしいけれど。けどいつあのCoAと同規模の災害が起こるかと内心穏やかじゃないのかも」

「だから次第、学園側も態度を改めていった……」


「そういえば知ってるかい? 昔はそれこそ特異体のみで結成された本物の革命組織があったとか。PD型症候群を発症した人間をあまねく救うべく、その他の人類に反旗をひるがえす秘密結社と呼ばれる存在が」

「人類全体と真正面から殴り合おうとした連中の話ですよね。何度か耳にはしてます」

「そういう彼らも今はもういない。つまりは結局、対立し合い、憎み合うだけでは未来へとは進めないという話なんじゃないかな」

「……ですかね」


 穏やかな表情に見えたが、遠影先輩のその瞳はどこかうれいをはらんでいるようでもあった。

 その様が余計にはかなさを際立たせ、そのガラス細工のような美しさに華をえていた。


「その秘密結社とかは、一体どこに行っちまったのやら」

「さあ、どこに行ったんだろうか」


 こちらに視線を投げ掛けて、また薄く微笑む。


「もしかしたら……」

「したら?」

「うん、もしかしたら学園が変わっていったように、彼らもその形態を変化させていったのかもしれないね」


 そう言って、窓の外の空を眺める。

 その横顔は相変わらずに陽気で優しげで――けれど、その瞳の色だけがどこかにうつろうよう揺らめいていた。

 ここに有ってここに無いように、空を越えた先をはるか遠く眺めていた。


 とりあえずまあ、目の前のこの人物がテロリストのような過激派でない事は知れた。

 まだ何か思う所がありそう気配だが、遠影遡馬という人間が危険な思想家でも誇大な妄想家でもないのはみ取れる。

 彼は思慮しりょ深く、いつくしみを持てる人間だ。


 と、先輩がまた薄く微笑むようにしながら横目だけでこちらの顔を覗いているのに気が付いた。

 その流し目はやっぱり思春期真っ盛りの野郎を挙動不審にさせるえらく色っぽいものだ。

 相手が男だと分かっていても、イカンでしょこれは。


「あの?」

「誤解はとけたかなと思ってね」

「ああ、いや……そんなつもりだった訳じゃないんすが」

「なら良かった」


 ごく自然に、はしゃぐ子供のような嬉しそうな顔を浮かべる。


「えっと、で――先輩、今回の計画も別段狙いはカンニングした情報を売りさばくという目的ではなく?」

「そう重要なのは落ち度が学園側にあるという点だよ。毎年、ご苦労にも大掛かりな舞台を整えて生徒をいじめようとする――その学園側の鼻を明かしてやろうってね」

「一応、あっちの言い分だと試験の一環らしいですがね」

「じゃあそれが果たして怪我人を出してまで敢行する価値のあるものなのか、そういう問題提議も含めるとしよう」

「成る程。俺らにとっちゃ先輩方の活動は痛快極まる訳っすね」

「気に入った? 良ければ、今回だけじゃなく正式に僕らの仲間になるかい――玄田くん?」

「有り難いお誘いですがね。まあ、考えさせておいてください」

「君も勿体ぶるね」

「いえいえ――」



 その後、取り立てる事もないような世間話が始まった。

 ここでの授業や生活の事、そんな近情を話した。

 話し上手であり聞き上手でもある先輩のペースにすっかりとはまってしまったようだ。


 ただやはり、それらのリップサービスは俺の疑念を払拭しようと試みるものであったのだろうか。

 効果の程で言えばそれは見事に成功している。

 どうも俺には量りかねる人物であるとは思えど、決して悪い人間とは思えなくなっていたからだ。

 下ネタから哲学の話まで幅広い知識が有って内容を選ばず、かと言ってそれを鼻に掛ける風でもない柔らかな物腰。

 意識高い系から低い系まで、みんなれこんでしまう事請け合いだ。


 後から思えば、人を惹き付けて止まないこの稀代の「たらし」のその術中に取り込まれていただけなのかもしれないが――

 まあ、楽しい時間を過ごせた。



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