カフェにて

 女性についていくと、女性はオシャンティなカフェに入っていった。街の一角の喫茶店、という雰囲気でもある。

 なんにせよ、僕の生活とは全く縁のない店である。奥の二人がけの席に向かい合って座り、適当に飲み物を頼む。

 これがかの有名なデートという奴であろうか。

 世の中とはすごいもので、ただただぶつかっただけなのに、いつの間にかデートにまで発展している。現実とは小説よりも奇なりというのはこのことだろうか。(作者注:これも小説だろ、というツッコミにはお答えしかねます。)

 どうしても現実味を帯びないこのデートとやら、最近の大学生というものはみんなオシャンティで毎日のようにこんなことをしているのだろうか。不思議でならない。毎日違う女の人とデートに出かけてる人脈が頭おかしい友人も居るし、案外相手というのも沢山居るのかもしれない。

 そんな中、注文していたアイスティーが届いた。向こう側には女性が頼んだソーダフロートが置かれる。

 前々から思っていたのだが、何故ソーダフロートにはメロンソーダが使われるのだろうか。普通の、ラムネみたいなものではだめなのだろうか。

 まあ、僕は別にさしてフロート系の飲み物は飲まないのでいいのだが。

 飲み物を飲みながら、それぞれ自分の好きな本について語ることにした。

 僕は一般文芸も沢山読むが、ライトノベルもそれと同等の量読んでいる。その中から個人的に好きな3冊ほどを選出し、それの魅力について適当に語ってみた。

 女性は、一般文芸の中から、その三冊の傾向を読んでのことなのか、僕が読んだことのない、僕好みのストーリーな小説を何作品かを教えてくれた。

 その日はそんなちょっとした雑談で終わらせた。帰り際に、また明日も一緒にどうです、と誘われたので喜んでと返事を返した。

 帰りの道中で、本屋により、女性に紹介してもらった本を購入。読み進めていた本を中断して女性に勧めてもらった本をそのまま読んだ。


 翌日、図書館で待ち合わせをしてからまた今日は別のカフェに足を踏みいれた。

 そういえば、とても疑問だったのが、

「そういえば、何故僕なんかとカフェに?」

これである。ずっと疑問で仕方がなかった。

「実は……。」

そう切り出したこの女性が話したのは要約すると以下のようなものであった。

 かなり前、所属している研究会の出張のようなもので僕の通う大学に来た。そのときに僕が目に入って、一目ぼれしたのだという。こんなこともあるのだな。

 そして、僕を追って図書館に入り、声をかけるか否かを迷って踏ん切りがつかずに頭を抱えているところを僕に見つかった。しかし僕の視線に気付かなかったこの女性は、そのまま話しかけることを決意し僕が隠れていた本棚の方向へ走り出す。

 もうあとは言うまでもないが、衝突である。

 図らずもこの女性はキッカケを作り出してしまったのである。なんとも、運命とは思わぬ方向へ転ぶものである。そして、少し話しをして、また次の日も僕を尾行、そしてまた話しかけるか悩んでいるところに僕が話しかけた。

 そしてこの女性は、こともあろうかデート誘いをすべきか否かで悩み始めたのである。

 そして、今に至ると。僕は目の前に座る女性を眺めた。

「あ、あんまりジロジロ見ないでください、照れるじゃないですか……。」

こうやって見てみると、しぐさの一つひとつがかわいらしく見える。

 そのまま見続けていると、彼女は指で自分の髪をもてあそびはじめた。

 もはやかわいらしく、というか、かわいい。めっちゃかわいい。

「あ、あの……その飲み物、飲まないんですか……?」

すっかり忘れていた。そういえば、飲み物を頼んだのだった。

 ぬるくなりつつある飲み物を眺めながら女性を眺める。

 やはり、かわいい。

「あ、あのッ! このあと、その……ホ…………。」

後半は声が小さすぎて聞き取れなかった。

「ん? どうしたの。」

「いっ、いえ、なんでもありません。忘れてください。」

忘れてくださいという文言に関しては僕はどうしても忘れられない性質なのだが。

『ホ』? ホから始まる、このあとにいけるところ……。

 ああ、ちょっと残念な感じの人なんだな、とも思いつつ、僕たちは連絡先を交換した。


 それからは、なんとなく、毎日連絡を取り合ったりもして、ときどきこういう風にデートもして、それとなく付き合い始めて。その『ホ』から始まる場所に行ったりもした。

 結局、ゴールインである。

 人生、どうころぶか分からないものなのだな、と思いながら、僕の女性となった女性を眺める。

 やはり、かわいい。

 そう思いながら、僕はこの女性と二人で、とある街の道路を手をつなぎ歩く。

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頭を抱える彼女 七条ミル @Shichijo_Miru

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