許容と寛容 -5
――いつもの天井だ。
まあ、方向性としては間違っていなかった気がする。弥彦は大袈裟でなく強かったわけだから、問題は策を講じるのが遅かったことだ。もっと早い段階で弥彦に説明して準備させておけば、一人くらいは倒せていたはずだ。
考えることは、どこに身を潜めるべきか、と相手の気を逸らせるような罠でも作れれば尚良い。しかし、時間的な制約はある。先程同様に五分弱しか余裕がないのなら大した準備なんてできるはずがない。
それなら……放送を流すのを時限式にするのはどうだ? あれだけの設備なら決まった時間に音声を流すことも可能だろう。あとは罠、というか仕掛けだな。すでに持ち越している防犯三点セットや粉洗剤、それにうちにある物と学校にある物を組み合わせれば、それなりのものが作れる。
誰も殺させずに、相手も殺さずに無力化できるような、そんな仕掛けが必要だ。少し甘めに見積もっても、万全の弥彦なら近接戦闘で犯人に勝てる。そのためには銃が厄介なわけだ。銃を無力化するには……水か?
「っ!」
衝撃が走った。
バッグの上に置かれているのは、防犯三点セットに粉洗剤、大きめの石とメモが掛かれたノート。そして――拳銃。
…………。
思い返してみれば、確かに死ぬとき拳銃を握っていた。
「銃、か」
頭の中に浮かぶのは、あまり褒められたものではない想像と思惑だが、しかし、銃を持つ相手に銃で対抗するというのは正当ではある。使い熟すのには練習が必要だろうけれど、幸いなことに時間はたっぷりとある。
この時点で同じ銃が二丁存在しているというパラドックスに陥っているが、結末を変えるにはこいつの力を借りざるを得ない。
目標は、殺させないこと。
それに、殺さないこと、だ。
戦おう。そうでなければ、平穏は訪れない。
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