許容と寛容 -2
次に目が覚めたとき、時間を確認すれば、最初に犯人たちが爆弾を起爆した時刻より十数分前だった。
携帯を確認すると華やクラスメイトから心配のメールが数件と、その後にテロリストたちに占拠された一部始終が報告されていた。
明日になれば、この悪夢も終わるだろう。
死なずに明日を迎えれば、日常へと戻ることができる。
「…………」
八百人の犠牲と、怠惰のおかげで生き延びる。
俺は、それを許せるのか? 自分自身を許すことができるのか?
……無理だな。だが、それならどうしろっていうんだ? 方法はいくらでも考えられるのに、制約を掛けられているせいで手を打てない。しかも、制約を破ることがイコール死に繋がるってのが厄介だ。一歩進もうとする度に死ぬのなら、もう何も――俺は心すらも持たなくていい。
「……ヘリか?」
音に気が付いて窓から外を見れば、立て籠もり事件の撮影をしに来た報道機関のヘリが飛んでいた。おそらくは報道規制のせいで学校の真上は飛べないから辺りを旋回しているのだろう。
「ああ、そうか……そう、なんだな」
視界の先に迫ってくるヘリコプターを見て、すべてを悟った。
どれだけ策を弄そうと、生き残ろうと考えようと、呪縛からは逃れられない。
「はあ……わかったよ。やりゃあいいんだろ? やってやるよ――テロを止めてやる。誰も死なせねぇからな。誰も――俺は……俺だって――!」
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