第4章 許容と寛容 -1
何が起きたのかわからない。
いや、理解はできるが意味がわからない。車に轢かれるなんてのは初めての出来事だ。今のは事件と全く無関係のタイミングだったし、あのトラックは俺よりも華に向かっていっているようだった。
つまり、狙われたのは華のほうか? 原因があるとすれば……俺が同じ時間を繰り返していると打ち明けたこと。それが起因しているのなら、誰かの手助けは望めない。だが、警察に連絡した時は何も起こらなかったことを考えると、同じ時間を繰り返していることを言わなければ、誰かの手を借りることは可能だということ。
しかし、説明せずしてどうやって協力を頼めと? テロが起きるなんてことを信じてくれる人はそうそういないだろうし、華は稀なケースだ。幼馴染で、互いに信頼し合っているからこそで、極端な夢想話に耳を貸す者なんていない。
「だとすれば……もう……」
何も出来ない。もう何も――何もするつもりは無い。
起き上がらせた上半身を、再びベッドに沈めた。
もういいさ。俺の知ったことではない。そもそも、どうして俺がテロを阻止しなければいけないんだ? 特別、頭が良いわけでもなく、運動神経が良いわけでもない。完全に人選ミスだろ。なあ、神様よ。
神じゃなければ政府の陰謀か?
たしか、どっかの国の映画にそんな内容のものがあったと思うが、あれはバッドエンドだった気がする。いや、物語的にはハッピーエンドだったが、最終的に同じ時間を行き来していた主人公は現実的には死んで、空想の中で生きていく。
そんな――物語だった。
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