痛みの先に -4

「ッ――はっあ!」


 詰まっていた息を吐き出すと、そこはベッドの上だった。


 服を捲って腹部に触れても血は出ていない。頭に触れても傷はない。そして、ここは病院のベッドでもない。ここは――家だ。紛れもなく今日の朝、全身の痛みで目覚めた家なのだが……携帯を開いて確認してみれば、今日は――今日だった。


 至極真っ当に、意味がわからない。


 考え得る可能性として、夢の中で夢を見ていた、とか。


 だがしかし、気が付いてしまった。痛みと、そして――視界の端に見えるチェーンとアラームとカラーボールの防犯三点セット。そこに足されたトイレの粉洗剤が、俺の体から血の気を引かせた。


 ――意味がわからない。


 わからないのだが、これだけはわかった。


 不穏で、不詳で、禍々しくて、不安定なこの状況は、俺の理解が追い付かないほどの事象ではあるけれど、少なくとも現実ではあると、気が付いていた。

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