勝手に青春劇@小野田光 ②
一体彼女は何だったんだろうか。僕があまりにも現実から乖離した生活をしていた弊害で見た幻だったのだろうか。いや、きっと現実だ。……まともに話せなかったが。
「彼女、たまに来るよ」
背後から知可子が耳元で囁く。思わずバッグにしまおうとしていた白紙のノートを手から滑らせ床に落としてしまった。
「え、あ、そうなんだ」
「彼女って、もうここの生徒じゃないらしいよ」
「そうなの?」
「どうもたまに来て、ああいう風に授業受けに来てるらしいよ」
「なんの為に?」
「さあ、アタシにもさっぱり」
何とも不思議だ。これほど意味の無い時間の使い方はないというのに、自ら進んで時間を捨てにいっている。しかも既に大学の生徒ではないというのだ。尚更理解に苦しむ。
僕はこの何のために生きているか分からない、謎の美少女の動向を探ることに、たった今決めた。
まさか他人の様子を窺うだけに時間を消費するなんて、僕の人生の中ではあり得ないと思っていたが、そんな日が来るなんて夢にも思わなかった。
彼女は講堂から出た後、何処へ行ったのか。授業が終わってすぐに立ち去ったので、消息を掴むことは容易ではない。彼女が行きそうな場所に心当たりは……ない。
わざわざ大学に来ていることを考えると、誰か大学に知り合いが居たりするのだろう。しかし、僕は大学のことについては一切知らないし興味は無かった。そこで、大学に行き慣れているリア充こと知可子に水先案内人を任せることにした。
「あの人の行きそうな場所って心あたりある?」
講堂を出て目の前にある噴水広場で、僕は彼女に話しかける。
「うーん、彼女は授業でしか見かけないし、話掛けてみた事も……あったような、なかったような……わからない!」
満面の笑みで誤魔化そうとするが、僕の前ではそれは通用しない。
「わからない、っていっても知可子の友達とかで知ってる人居ないの?」
「ああ、ああいう系とはつるまないからね。聞いても分からないかも」
ことごとく暖簾に腕押しな答えが返ってくる。
「リア充のくせに、交友関係広いんじゃないの?」
「リア充、っていってもアイドル研究サークルの中の知り合いしかいないよ。言ってる程リア充じゃないし」
彼女は大学内のアイドル研究サークルに所属している。例のDBSのチケットもそこから流れてきた。
「言ってる程、か……既に大学に毎日通えている時点でリア充な気がするけど」
「いや、通うのは当たり前だからさ」
その言葉が、僕の忌諱に触れた。
「な、なんだって?通うのが当たり前だって?何を言ってるんだ!それは友達が作れるリア充だから言えることばだ!僕みたいに友達居ない人が大学行って、どうするんだ?!今日みたいに浮いちゃうからさ、行きづらいんだよ……まあ授業受けても時間の浪費だし、意味無いし、僕にとってはどうでも良いなよね。あとさ」
「そういう言い方するから、友達出来ないんじゃない?」
僕から繰り出されるマシンガンのような言葉を、彼女の冷や水を浴びせるような言葉でぴしゃりと止めさせた。
「ご、ごめん。言い過ぎた」
お互いに気まずい空気になってしまった。どちらが先に口を開くかのチキンレース。
沈黙を破ったのは知可子の方からだった。
「とりあえず、何も情報無いし、メイドカフェ行こうか」
彼女はいつも暇さえあれば通い詰めているメイドカフェ『ラヴドール』に行くことを勧めてきた。確かに例の彼女のその後の行き先や、彼女に関する手掛かりを得られない今、何をしても無駄なような気がしてきた。
「ああ、うん」
僕は一旦彼女を追うことを諦め、半ば押し切られる形でメイドカフェ『ラヴドール』に向かうことにした。
「お帰りなさいませ!ご主人様!お嬢様!」
大学からほど近い距離にあるのがこのメイドカフェ『ラヴドール』だ。駅からも近いという事で通勤帰りのサラリーマンが酒飲みついでに寄っていく、ある種スナックの代替のような側面も併せ持っている。そのようになった原因と思われるのが、釜戸官(かまどかん)の存在だ。彼、いや彼女といった方が差し障りはないかも知れない。そう、いわゆるオカマという奴だ。しかも並のオカマより、いや普通の女性よりも美人なのだ。
「あら、また来たの?懲りないわね~」
入店したのに気がついて、他のメイドを無理やり掻き分けて二人に近づいてきた。
「また来ちゃった」
知可子が釜戸官とハイタッチする。
「待ってたわよ。さ、こちらへどうぞ」
そう言うと、釜戸官はいつもの席であるカウンター席に僕達を案内した。
「今日はどうしたの?光ちゃんまで来ちゃって」
カウンター席に腰掛けると、早速釜戸官から話を振ってきた。それと同時にウェルカムドリンクとして、トマトジュースが二人に差し出される。
「いや、まあ、知可子に誘われちゃって」
「あら~もしかして光ちゃん狙い?」
「それはない」
一瞬で断言された。親戚とはいえ、瞬時に否定されると心に来るものがある。
「あらそう。じゃあアタシがもらっちゃおうかな~」
釜戸官が僕に抱きついてくる。僕の首筋に腕を回し、頬と頬を接触させる。男であれば頬をすり寄せればざらついた髭が当たり、得も言われぬ寂寥感と不快感に苛まれるが、彼女の場合は違う。彼女は既に全身永久脱毛済みなのだ。つるつるなのだ。そう、つるつる。大事なことなので二回言いました。
彼女は今もなおネットアイドルとして一斉を風靡し続ける程人気なのだ。そんな人物がまさか全身毛だらけであっては好感度が下がる。彼女にとって脱毛は当然であり、世に出るための一つのエチケットなのだ。
「おお……」
僕は思わず剥きたてのゆで卵のような艶やかな肌に吸い寄せられてしまう。いつまでも触っていたい、この癖になる感触。
「ちょっと、触りすぎじゃない」
「少しぐらい釜戸さんとスキンシップしても罰は当たらないと思うが」
「いやいや、ファンもこの店に大勢来てるしさ、ね?」
ふと我に返り周りを見渡すと、僕に対して冷ややかな無数の視線が今にも射殺そうかという程に集まっていた。
「ご、ごめんなさい」
「いいのよ、あなたがよければ」
釜戸さんが僕の顎の裏を優しく摩ってくる。背筋に電流が走っているかのような衝撃を覚える。ダメだ、このままでは釜戸さんルートに突入してしまう。僕はノンケだ。いや、釜戸さんとならアリ?嘘、僕ってバイ?
「あ、お、えへへ」
「なに満更でもないって顔してんの?」
更に眼光が鋭くなった知可子の視線が僕の胸に突き刺さる。すいません。悪ふざけが過ぎました、とは思って無いけどねー。やーいやーい。
「アタシはこういう可愛い男の人と遊ぶのが好きなの」
「まあ、そうなんでしょうね」
知可子がヤケを起こし、トマトジュースを一気飲みしてしまう。
「あら~元気ね、知可子ちゃん!」
すると咄嗟に釜戸さんがメニュー表を取り出す。
「誰かさんのせいでね。とりあえず、ジンジャーエールで」
僕に視線が向けられていたのは気のせいだろうか。知可子の注文に応え、釜戸さんはカウンター奥へと消えていった。
「全く、あんたは見境がないのね」
「いや、特別美女に弱いってだけだよ。へへ」
引き笑いがこぼれる。
「やだもう、すぐに鼻の下伸ばしちゃって」
思いっきり頭を叩かれる。僕が悪いことをしたっていうのか。別に可愛い女の子(一部を除く)を愛でたって良いじゃないか。それは全世界の男子であれば共通のことだ、多分。
「はい、お待ちどおさま」
釜戸さんが注文したジンジャーエールを早速運んできた。
「ありがとう」
「ところでさ」
知可子が感謝の言葉を述べた途端、釜戸さんの様子が一変する。ここからは僕らが来たときにだけ話す恒例の、釜戸さんの、釜戸さんによる、釜戸さんのための素晴らしい『趣味セカイ』が店中に展開される。
「最近これにハマったのよ~」
そういって取りだしてきたのか、スマートフォンだった。
「え、ハマったってそれのこと?」
「違うわよ~。こっち!」
そう言うと、釜戸さんはスマートフォンを瞬時に操作し、ある写真を僕達に見せてきた。
「これよ!これこれ!」
そう言って無理矢理見せられたのは、何とも毛並みの美しい、耳が三角形で直立している猫だった。
「これ、道端で見つけたのよ~かわいいでしょ~」
「ホントだ!かわいい~!どこで見つけたの?」
女は可愛い動物の話には目がないとは言ったものだ。知可子があっという間に食いついた。それ、立派な釣り針ですよ知可子さん。
「この子はね、店の裏に居たのよ。ほら、この毛並み、まるでシバルニアファミリーのお人形さんみたいでしょ?」
「へ、へぇ。シバルニアファミリーね……」
ここで知らない人の為に、シバルニアファミリーについて説明しよう。シバルニアファミリーとは、主に女児向けに売り出されているミニチュア人形と、それに合わせた模型などの総称である。女児向けと言うだけあって、見た目はとてもファンシーに作られており、ウサギやネズミがデフォルメで擬人化している。だが、このシバルニアファミリーは、他の女児向け玩具とは一線を画すある特徴がある。それは、全てのキャラクターがシバルニアの名前の通り亀甲縛りにされているのである。女の子達は見た目がファンシーなのに騙されて買い込むが、大人になってその意味を知った時、一つの苦い想い出が出来るのは明白だろう。
そんな趣味の悪い趣向をこらしたシバルニアファミリーは、もちろん女児だけで無くそういった縛られ好きの大きなお友達にも好評を博し、女児の手に渡る前に醜い金と心を持った資本主義の豚共に買い占められているという何とも嘆かわしい現象が巻き起こっている。
もちろん、この釜戸さんもシバルニアファミリーの愛好家の一人だ。だが、この釜戸さんがシバルニアファミリーに対する想いは人とは一線を画している。
「久しぶりにこんなシバルニハファミリーに似た猫を見て、犯しそうになったわよ」
「うわ……」
猫がシバルニアファミリーに見えるだけで、釜戸さんは獣姦しようとしたのだ。さすがビーストハンター釜戸。案の定、知可子が完全に引いている。しかし、周りの客達はその話を聞いて、なにやら様子がおかしくなっている。
「ああああああああ!!!!!」
「釜戸さんマジっすか!」
「俺も猫になりたいです!」
釜戸さんファンが揃いも揃って発狂しカウンターに詰め寄り、獣姦話に聞き入っている。
「うわぁ」
知可子はそのファン達に侮蔑の目線を送る。だがそんなものにはお構いなしにファン達がその時の様子を聞き出そうとする。
「なかなかこのヒップのラインが神がかってるのよね。あとは腰回りがもう少しシュッとしてれば……」
「もう結構です」
知可子が僕の腕を掴み、外に出よう、と合図を送ってくる。折角釜戸さん恒例の獣姦話が始まったが、知可子が不機嫌な顔を浮かべているので、しょうがないと釜戸さんに勘定をお願いした。
「あら、もう行くの?」
「ごめんないさい、この後用事があるの」
「あらそう、残念ね」
支払いを手早く済ませ、店から逃げるように出て行った。
「またきてね~」
釜戸さんのエロトーンボイスで後ろ髪を引かれる思いになるのはいつもの事だ。
「良かったの?あんまり店でゆっくり出来なかったけど」
店を出て、早足で逃げ去ろうとする知可子に声を掛ける。
「い、いいの。釜戸さんのアノ話しだけは好きになれないだけで」
「あ、まあ、しょうが無いよね。獣姦だし」
僕の言葉に、形相を一瞬で変化させた。修羅の顔である。
「その言葉を口にしないで、汚らわしい」
「ご、ごめん」
思わず気迫に押され、謝ってしまった。
正直なところ、しばらくぶりに外に出て釜戸さんの店に顔を出したのだから、もう少しゆっくり過ごしたかったが、ああなってしまっては仕様が無い。
これで家に帰ってしまっても問題無いのだが、この機会を逃したらしばらく家から出ないだろうから、やはり会える人には会っておきたい。果たして、会っておくべき人は僕にはあと何人居るだろうか。
いつもの知可子や釜戸さんにはもう会うことが出来た。これはいつも事故みたいに巻き込まれるかのように会うことが多い。故意にしか会えなくて、僕の人生の中で重要な役割を果たしている人物といえば誰だろうか。その答えは、意外にも知可子のスカートのポケットの中にあった。
「あ、そういえば」
「どうしたの?」
知可子から沈黙を切り裂いて言葉が発せられ、食い気味に反応してしまう。知可子はポケットを弄り、何か発見したようなしたり顔を浮かべた。
「いや、そういえば、これ返してなかったなって思って」
ポケットの中から取りだしたのは、金属の鍵だった。
「それは?まさか、僕の家の鍵じゃないよね」
知可子が僕の側から飛び退く。
「そんなわけないでしょ?誰が親戚の家の合い鍵を自ら進んで作んのよ」
「じゃあ、それは?」
「ほら、あれだよ、温太の家の鍵!」
「ああ、あー、あいつか……」
すこし脳から記憶を引っ張り出すのに時間が掛かってしまった。とはいえ、名前に記憶があるだけで、どのような人となりであったかまでは思い出せない。確か何か変な特技みたいなものを持っていたような気がする。あとは、知可子が合い鍵を持つほどに親しい間柄であるということだ。これは記憶ではなく、物的証拠からの推理である。まあ、普通の人なら合い鍵見ただけで察しちゃいますよね。リア充死ね。
「せっかくだから、久しぶりに行ってみない?」
「え、行ってないの?温太の家」
「そうなんだよね~最近あんまり行かなくなっちゃったね」
おや?既に破局寸前なのか?他人の不幸で今日の飯が旨くなるぜ、ヒャッハー!!
「え?なんでさ」
「それが……ほら、アイツ女装癖あるじゃん」
なんと、それは可哀想に。
「ああ、まあ、そうだね」
「まあ、そう、だね。アイツの女装って、なかなかじゃん?」
知可子の中で、なかなかとはどのようなレベルなのだろうか。釜戸さんレベルであれば、ネットやコスプレイベントに顔を出せば一躍時の人になってもおかしくはない。
「なかなかって、まさかあの女装、気に入ってるの?」
「まさか、その・・・・・」
先ほどからやたらと知可子が言葉を詰まらしている。何か不都合な事実があるのだろうか。まあ、だいたい察しはついてしまうが。
「言い方が悪かったね。温太の女装ってさ、結構ヒドいじゃん?」
「そうだね……まだDBSの方がマシに見えるかも知れないね」
「だって、女装なのに髭も剃らないし、全身脱毛してないし、筋骨隆々だし、とにかく女の子に見えないのよ」
そりゃ、元が女の子じゃないし、特に女の子になる努力をしてないしな。せめて化粧ぐらいはして欲しかったが、したところで誤魔化しようがないんじゃないかな。
「やっぱり釜戸さんレベルを見てるから、目が肥えちゃってるのかな」
「そうだよな、アレは女装とかじゃなくて、ちゃんと女を目指してやってるからな」
とりあえず、釜戸さんとは趣の違ったクオリティの低い女装とやらを見に、温太の家に向かうことにした。
温太の家は、駅から十二分の場所に位置している。駅から遠くも無く近くもない、絶妙な距離に位置している。先ほどまで居た『ラヴドール』からはそれ程距離はない。
彼はアパートに住んでいる。築年数がある程度経っており、所々柵が無かったり壁が崩れていたりと色々と悲惨な状況だ。そんなにボロボロなら大家が住民から巻き上げている家賃を使って修繕すれば良いのにと思うが、このアパートの住人は残念ながらというべきか、現状を察して自ら退出していったのかは定かでは無いが、大家と温太しか居ない。大家も既に財産はこのアパートだけとなっており、いよいよ手の打ちようがないのだ。
そんなアパートに、たった今たどり着いてしまった。
「ホントにここ人住めるの?」
思わず知可子に尋ねてしまう。
「まあ、うん、ふつうはそう思っちゃうよね」
温太はあろうことか、このアパートの二階に住んでいる。正気の沙汰では無い。
アパートの外階段の手すりが鉄製で、所々錆が進行し欠けている。ここで横に押されれば即死は免れないかもしれない。
いよいよ玄関前に到着した。ここまで素晴らしい家にお住まいであるからして、きっと人間的にも素晴らしいお方なのだろう。もちろん悪い方の意味だ。
知可子がドアノブの鍵穴に鍵を差し込む。だが鍵穴にもガタが来ているようで、差し込み切っているにも関わらず鍵をひねることが出来ない。
「あれ?開かない」
必死にドアノブを引っ張って開けようとする知可子だが、全くびくともしない。
「ここは、僕の出番かな?」
「うわー引きこもりに力貸されるとか屈辱だわー」
「うるさい!黙ってそこで見てろ」
ドアノブに手を掛け思いっきり手前に引く。するとドアの上部が軋みだした。
「ああ、ゆがんでるのね」
開かない理由が分かったところで、ドアノブを下に押しながら再び引いてみる。
確かな感触を感じた。ドアは緊張が解けたかのようにすんなりと開いた。
「お邪魔しまーす」
よく考えれば断りもなしに他人の家に上がり込んでいるのだ。とはいえ、それは良心の呵責の問題なのでこの際は無視することにする。
「……・来たの?」
部屋の奥から声が聞こえてくる。
「やあやあ」
「来るなら連絡してよ、女装したまんまだよ」
暗がりに居たので分からなかったが、今目の前で声を発している女装野郎が丹温太らしい。
「大丈夫だよ、今日も……ププ……似合ってないよ」
その姿はまさにある意味芸術の域だった。釜戸さんの女装(もはや女といえるが)と比較対象にならない程にヒドい。僕は何とか笑いをこらえているが、知可子は堪えきれず、腹を抱えてうずくまってしまった。
「なんだよ、見る度笑いやがって」
「だって、それ、ちょっとは女の子になろうと努力しないの?スネ毛ボーボーだし」
「もう諦めたよ」
漆黒のワンピースを身にまとった温太の背中には、哀愁を漂わせる何かがあった。
「それで、今日は何しに来たの?」
「遊びに来た」
温太からの問いかけに素っ気なく答え、断ることなくリビングに鎮座する卓袱台の前でへたりと腰を落ち着かせる。
「遊びに来たは分かるけどさ……いつまで居る気なの?」
「とりあえず、終電まで?」
「嘘でしょ?明日朝から講義なんだけど」
「大丈夫、大丈夫!なんとかなるって」
知可子はコップを持つ形を右手で作り、それを卓袱台に打ち付け、飲み物を要求する。
「いや、ちょっと、今飲み物切らしてて」
「うそー、そんな訳ないでしょー」
しびれを切らした知可子は立ち上がり、キッチンにある冷蔵庫を開け、中身を確認する。温太の言葉通り、冷蔵庫に飲み物はなかった。それどころか、食べ物らしきものも無かった。
「うわー、ホントに何もないね」
「だから言ったでしょ」
じろじろと中身を丹念に調べる知可子を、温太は冷蔵庫から引き剥がす。
「もうそれ以上探しても出てこないよ」
知可子は嘆息する。
「仕方無い、コンビニで買ってくるか」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます