第330話 市役所、取材《仮》

 10月某日。

 秋晴れの空が気持ち良かった。

 私たちは、横須賀中央駅から徒歩十分ほどの市役所庁舎の最上階、大ホールで吉田雄人市長ら審査員を前にプレゼンする事となった。


 各高校のプレゼンが終わり、ついに私たちの番が回ってきた。

「ふ~…!!」

 大きく息をついた。横にいるサンタたちも落ち着かないようだ。

 直前まで目を通したメモをサンタに託した。

「はい、これ、預かっておいて!!」

「え、見ないの?メモ!!」

「フフ、そ、あとは出たトコ勝負よ!!」


 私は、ホール壇上のパネルの前に立った。

 さぁ、勝負よ。

「Y高校三年、野原イチゴです。」

 頭を下げた。パチパチとお座なりの拍手が聞こえた。


「ここに来るまで…、様々な事がありました。当初、私自身、ヨコスカ、ネイビーパーカーには反対でした。」


「おいおい、マジかよ。ここでダメ出しィ~…!!」

 ゴンちゃんが嘆いた。


「…、ただのオヤジギャグから始まったモノでした。」

 審査員たちも困惑気味だ。


「まず…、これまで私は自分の事…、特に大学への進学で精一杯で、地域に還元する事や復興など全て他人任せでした。どうせ誰かがやってくれる。


 そう思ってました。女子高生の私たちが何かをした所で、何かが変わるはずはないと…。


 ですが、ネイビーパーカーの試作品を作り、こうしてコンペで発表するに至り、心を入れ替えました。女子高生の私たちにしか出来ないモノ……。


 そういうモノがきっと有るのではないか。


 こうして出来上がったモノが私たちのネイビーパーカーです。


 ネイビーパーカーを着る事で横須賀をもっとアピール出来るよう頑張って行きたいと思います。」


「では、百聞は一見にかず……。私たちのヨコスカ・ネイビー・パーカーを見て下さい。」

 手でサンタらを呼び込んだ。

 サンタ、ゴンちゃんら、六にんが壇上に整列した。

 審査員たちも注目の中、私たちはお互い視線を送り合い、

「せェ~の…!!」

 上着をパッと脱いだ。

 全員、色違いのパーカーに身を包んでいた。

「オ、オォ~ー!!」低い歓声が漏れた。


「これが、私たちのネイビーパーカーです。これを着て私たち女子高生が横須賀を変えていきたいと思います!!」

 六人が手を繋ぎ、万歳をした。

 パチパチパチと拍手が起こった。


 優勝はY高校。私たちだ。



 取材のため記者らも集められ、かなり大掛かりな授賞式となった。


 ウチらが会場に入るとフラッシュの嵐だ。まるで、アイドルになったような気分。


 当時の吉田雄人市長から賞状を貰った。

「キミたち…、Y高校の女子のような人たちが、これからの横須賀の復興のシンボルになるように期待してるよ!!」


「はい、ありがとうございます。」

 リーダーとして私が賞状を受け取り、市長を交えて全員で撮影した。



 そのあと記者会見が行われた。

 囲み取材だ。矢継ぎ早に質問が飛んできた。

「高校3年生って事は、全員受験生なの?」


「いえ、この六人は、推薦で大学は決まっているので、今回、この企画にエントリーさせて戴きました。」

 代表して私が応えた。

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