第19話 《サンタ》と表示されて

 その時、着信音が響いた。私のスマホだ。


「ン……😔💦💦」

 着信画面を確かめると《サンタ》と表示されてあった。


「サンタかァ……!!」

 私がボソッと呟くと、隣りに座る勝利ショーリが覗き込んだ。

 頬がくっつくほど近い。

「ちょッ、ちょっとォ~ー近いだろォ~ー」



「あ、ああァ~……、誰だよ~……?

 サンタってッ! 

 まさか、彼氏かよォ~ー……!?」

 勝利ショーリは口を尖らせ怒った口調だ。


 濃厚接触と言えるほど顔を寄せて来た。




「ち、違うよ。勝手に覗き込むなって……」

 慌てて画面を隠した。

「女子だよ! 女の友だちィ~……!!」

 万が一、彼氏だとしたって勝利ショーリには関係ないだろう。



「もォ~…… 彼氏なら許しませんよ❗❗❗

 お父さんはァ~……❗❗」

 ショーリは腕を組んで、『プンプン』と怒ったジェスチャーをした。



「はァ~…… 誰が、お父さんだよ❗❗

 三田みたよ。三田 有紀ッて女子❗❗」

 私は通話ボタンを操作した。


「フフ……、三田みただから、サンタか。

 なるほど、ねェ……」

 ショーリは頭に思い浮かべたのか、妙に納得した。



「ン……、もしもし……」

 ウチは出来るだけ、ショーリから遠ざかろうとした。



「何だよ。イチゴォ…… オレにも聞かせてくれよォ……」

 だが、彼は執拗に追いかけてきた。

 音声が入ってしまう。



『もしもし…… イチゴォ~……❓❓

 誰か、そばにいるのォ……』

 スマホからサンタの声が聞こえた。



「え、いえ…… べ、別に…… 誰もいないけど…… な、何か用ォ……❓❓」

 懸命に公園の中を走って、勝利ショーリから逃げ回り応対した。


『何ッて、コンペの事でしょォ……』


「あ、ああ…… コ、コンペねぇ……

 ちょっと邪魔するな……」

 また脇から勝利ショーリがちょっかいを出してきた。

 まったく症二病か…… こいつは。



『な、何よ…… イチゴォ……

 やっぱ、誰か、そばにいるンでしょ❓』

 まだサンタは疑っていた。


「いや、べ、別に…… ちょっと、フロンターレが……」

 つい口が滑った。


『え、何ィ~、フロンターレッて……❓❓』


「い、いえ、べ、別に……

 ッで、コンペの案……❓❓」

 何とか、話題を逸らさなければ……。


 フロンターレの事を説明するのは厄介だ。



『そ、あれから何か、良い案が出たァ~❓』



「あのねェ…… 出るワケないでしょ!

 さっきから一時間も経ってないのよ。

 そんな簡単に良い案なんて出ないわよ……」

 どこの一流プランナーだと思っているんだ。





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