桜子~10~

 「何してたんだ」と聞かれた朔は「色々あった」と答えている。この様子じゃ私が話しかけられる暇なんてない。


「うーん……」


 困っている私を見た八重ちゃんは、ドヤ顔でこう言った。


「今日デートしない? って聞けば、すべて解決じゃない?」


「それのどこが解決なの」


 どうやら、そう言えば周りがひいてくれるし、朔とも話せるし、デートも出来るから一石三鳥くらいらしい。


「えぇ、それじゃあ、なんか違わない?」


「大丈夫」


 そう言ってグッと親指を立てる八重ちゃん。ここは私も決意するしかない。


 ゆっくり朔の元へ歩いていく。


「あ、桜子どうし……」


 気が付いた朔は話しかけてくれるが、言葉の途中で私は話し始めてしまう。


「朔、今日私とデー……」


 そう言いかけたときに運悪くチャイムが鳴ってしまう。


 みな口々に「先生来ちゃう」と言う中、「どうした?」と聞いてきた。


「あ、いや授業始まっちゃうからあとで良いや」


 結局言えずじまいだった。


 その後も何かと自分で理由をつけては、朔と話さずに過ごし放課後になってしまった。



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