朔~10~

 

  俺が話しかけられてしまったがために、桜子に話しかけに行くことが出来なくなってしまった。だが、桜子はこっちをまだちらちらと見ている。


 どうしたものかと思っていると、向こうから近付いてきた。


「あ、桜子どうし……」


 こちらから話しかけてしまおうと、声をかけたがその声に桜子は自らの言葉をかぶせてきた。


「朔、今日私とデー……」


 とその瞬間、チャイムが鳴ってしまった。桜子はそこで言うのをやめてしまった。


「どうした?」


 そう俺が聞くと「あとで良いや」と返し、席に戻ってしまった。


 でー……とはなんだったんだろうか。



 俺は休み時間が来るたびに、さっきの続きが聞けるかと待っていたが桜子は来なかった。そしてとうとう放課後になってしまった。


 放課後になっても、桜子はすぐに教室を出ずに席にいた。何か考えているようなその顔にどうしたものかと悩んだが、話しかけないことには何も始まらないと腹を括った。



「桜子、さっきはなんだったんだ?」


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