殺す気はありませんでした。

素敵な幹部様

第1章 日常的な美女

“ピピピピ” 携帯のアラームで目が覚める。

 この女、近藤奈緒は至って普通の女である。

 しかし、一つ違う点を挙げるのであれば彼女の職業が探偵って事だけだろうがそれも特に異常はなく平凡である。

 大きな欠伸を一つした後、思いっきり背伸びをしカーテンを開けて窓の外をジッと眺めてにっこり笑い寝室を後にした。

朝だからなのかさっきまで布団に包まって暖かかったせいなのか…いつも以上に冷たく感じる長い廊下を早足で抜けて洗面所の扉を開ける。

今日は珍しく朝から、待ち合わせの約束を取り付けていた為急いで顔をゴシゴシと乱暴に洗えば、まだ水で目を開けないまま手探りでタオルを探し顔を拭く。

「はぁー。サッパリしたわ。にしても、久しぶりだわ…こんなに早く起きたの。」

久しぶりの、死体がらみの事件。

今まで、迷子の猫探し。書類整理。不倫。行方不明の老人探し。

聞いているだけで、ああもういいです。っと言いたくなるような仕事ばかりしか無く、心なしかとても楽しみにしていた為予定の2時間前…つまり8時に起きてしまった為に、眠い。

そんな思いもあるが、今寝て仕舞えば必ず予定の時刻を余裕に越えてしまう気がしたので、再びまだ冷んやりと冷たい廊下を先程よりも足速に歩きリビングまで移動する。

私は、一人暮らしなので当然美味しそうな朝食が並んでるはずもないので自分で作る。

トースターに食パンを入れ3分半まで取っ手を回す。

焼いてる間に、珈琲やマーガリンなどを用意しながら小さい頃流行っていたような歌を口ずさむ。

「キノコのこの子元気の子〜。」

少し、自分でも異様な光景だなと思い失笑したが誰もいない事を良いことに続きを歌っていく。

結局、途中までしか覚えておらず鼻歌となってしまったが“チン”という音と共に香ばしい香りがリビングに広がりお腹を鳴らす。

マーガリンをたっぷり塗って頬張ればたちまち、マーガリンと小麦の香ばしさそれとお供にほろ苦い珈琲ああ幸せだ。と思いながら、華やかな気持ちでテレビのリモコンを手に取り電源を入れた。

《続いてのニュースです。昨夜未明岐阜県高山市にある山奥の廃墟で女性の遺体が発見されました。遺体の状態は、胴体と頭部が切断されており身元は未だ解明されておりません。…永瀬さんこれは、酷い事件ですね。》

《ええ。あんまりです。遺体を隠すために切断したのならわからない気もしますが、今回の事件は、隠す事なくそのまま発見されたんですよね?これは、殺人でも猟奇的殺人です!》

“女性” “頭部 胴体 切断” “猟奇的 殺人”

「何かが見えそうで見えないのね…。この事件担当したいわ。」

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殺す気はありませんでした。 素敵な幹部様 @Kotobadekataru09

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