掃き溜めに鶴
その女性は――長い白の髪で真っ赤な瞳、どことなく感じる特殊な雰囲気を出していた。落ち着いている感じで気品が感じられ、ついつい目を奪われてしまうほどの美しさを持っている。
服はその髪にあった白の服で手には日を遮るためなのか傘を持っていて、掃き溜めに鶴その言葉通りな人でこの町には全くと言って似合わない。
「どうかしましたか?」
彼女は座り込んでいたライフに優しい声音で声をかけてくる。
「いや大丈夫だが」
声をかけてきた彼女をライフはどこかで会った覚えも見かけた覚えもないのだがいきなり声をかけられて、いろいろな疑問が頭を回る。
それにこの町とは会っていない独特の雰囲気せいで反応が遅れてしまう。
「俺たちどこかで会ったか?」
それが一番の疑問だ、なぜ声をかけてきたのかそれが分からない確かに少し悩んでいたように見えたかもしれないがこの町にはそんな人たくさんいる。流石に全員に声をかけていることはないだろうなのになぜピンポイントできたのかそれは、単なる偶然かライフを知っていて何か狙いがあるのか。
「いえお会いしたことはこれが初めてだと思います」
彼女はライフの質問に全く動揺見せないで少し考えた後答える。
動揺を見せないってことはあったことない確率が高いとライフは少し気を緩める。
別にいつもこんなに警戒しているわけではないが、ついさっきも財布を取られたこんな町だと話が違うもしかしたらといろいろなことを考えてしまう。
ライフのこの町で会った人の信用はかなり低い状態だ。
「そうかまあ心配してくれてありがとな俺はライフだ」
「私はアイリスと申します」
アイリスの雰囲気同様に言葉遣いも上品で何かの貴族かなんかだと思ってしまうほどだ。
「ライフさんはこの町に住んでいらっしゃるのですか」
ライフはその言葉が心に刺さる――この町に住んでいるわけではないのに間違えられるということはそれぐらい汚いということだ、まだこの町に来て何時間しかたっていないのに。
「いや旅をしていてつい最近この町に来たんだよ、アイリスは何でこんな町に来たんだ」
ライフは少し顔を引きつって言葉を返す。
アイリスがこの町の人ではないことは服などで一目でわかる。
だからこそこの町に来た意味が分からなかった観光とかでこんな汚い町なんかに来たりしないだろうになんか重要なことがこの町であるのだろうか。
「少し会ってみたい人がいたもんですから」
「会ってみたい人ってこの町にか?」
この町に凄い人はいるとは思えないがこんなお金持ちっぽい人が自らこんな町に来たのだ本当に凄い人がどこかで隠れているということなのだろうか。
そんなことよりも問題はこんな可愛い子が会いに来るってどういうことなのだろうか。
「はいこの町に来るという情報がありまして少し前から滞在していました」
来る情報があるってことはこの町に住んでいる人ではないようだ。
「三日前ぐらいか?」
会ってみたい人がいると言っても他の町ならともかくこの町ならほかのところから来た人はこれくらいしか耐えられないだろうと思い言ったのだが。
「2週間前からです」
「2週間! よく耐えられたなーそんなに会ってみたいやつなのかよ」
「はい昔から是非とも会ってみたいと思っていましたので」
アイリスは余程会ってみたいのか口元を緩める。
「まだ見つかってないのか?」
「いえ情報の通り何とか見つかりました」
2週間この町にいたことが無駄にならずに済んだのはよかったことだ。アイリスは嬉しそうに笑う。
「で、どんな奴なんだよ」
なぜかこの町に来ることにしたのか、アイリスがわざわざ2週間もこんな町に滞在してまでも会いたがっていた一体どんな奴なのか気にならない方がおかしいもんだ。
「すみません言うことはできません」
即答されてしまったがやはり気になって懲りずに聞こうと思ったが少し悪そうなアイリスを見たらライフは何も言うことはできなかった。
だができないとなると他の人に知られると問題になるような奴なのだろうこの町にいるってことはひょっとしたら警察に追われているような奴かもしれない。
「そうかまあ別にいいけどよ一人だと危なくないのか」
ライフは少し気を落としたが次に気になったことを聞く。
周りを見てもアイリスの仲間らしい人は見渡らない、ここに一人で来たわけではないだろうが短時間でもこの町は危険だ。アイリスは特にお金を持っていそうな感じなので狙われやすいと思うのだが。
「いえもう一人いるので大丈夫です」
「いやそれでも別行動はやめたほうがいい、そうしないとそうしないと俺みたいに・・・・・・。」
大丈夫だろうと高を括っていてぱっと財布などが抜き取られる、これは誰からか聞いた話でも予想でもないライフの体験談だ。
アイリスは2週間滞在してて何も取られてなさそうなのにライフはほんの少ししか滞在していないのに取られたことが恥ずかしく、心配をかけたらだめとという二つの理由で出かかった言葉を我に返り言葉を切り上げる。
「どうしたのですか?」
アイリスはライフの様子が気になったのか顔を近づけて聞いてくる。
「いやいや何でもない、それよりもう一人ってのはどこにいるんだ?」
我に返るとすぐ近くにアイリスの顔が近くにあったのでライフはドキと少し驚き後ろに下がりながら平常心を保つ。
「ああそれでしたら何か用事があると先ほど男の人達と路地裏に」
「そっそうか」
ライフは少しドキドキしている状態から寒気を感じるまで一気に下がる。
やはりボディーガードみたいな人がいるみたいだこんな町ならもう何十人もやられてそうだ。
こんなお嬢様みたいな人のボディーガードなんて厳しいに決まっている。こんな汚い町に来てからも喋りかけた人見ていた人商品を渡した人なんかもまとめて殴り飛ばしそうだ。
それに負けを知らないぐらいに強いことだろう。
そいつに見られたら「菌が移ったらどうするんだ」とか何が何でもいちゃもんを突き付けられて殴られそうだ。
ライフはそのことを想像し少しの笑みを浮かべる。
「その連れボディーガードみたいな人なのか?」
「いや違いますよただのお友達です、一緒に来てくれると言ってくれたので来てもらったんですよ」
ライフは別に人間不信になったわけではない確かに少しダメージがきたがこう思うのは理由があるのだ。普通ただの友達が知らない男の人と路地裏に行ったりするわけがない、道の質問ならその場ですればいいし路地裏に行くことはないのだ。
「その連れはいつぐらいに帰ってくるんだ?」
「そうですねー早めに終わらして来ると言ったのでもう来ると思うんですが」
「そうか」
「失礼ですが、ライフさんは誰かと来ていないのですか」
ライフはいきなりの質問に肩を跳ねさせる。
仲間はいなくてボッチですと胸を張って言えるわけでもないがくだらない噓をついてもばれそうなので事実を言った方がいい。
「一人旅だよ一人旅」
ライフは少し恥ずかしく後頭部をかいて答え精一杯のカモフラージュを施す。
「確かに誰の意見も聞かずに自分だけで決める一人旅も面白そうですね」
俺を気遣って言ったのかは分からないがアイリスは笑っている。
「それにこの町を嫌いな人は多いいですし一緒に旅をする人がいたらこの町には来れなかったかもしれませんねこんなにいい町ですのに」
アイリスは少し笑い周りを見渡しながらそんな感想をこぼす。
確かにこんな町に来てみたいやつが丁度仲間全員ってことは早々起こりそうもないそこが一人旅のいいところだろう。
「今なんて言った」
ライフはある言葉が耳に留まって聞き間違いかと確かめる。
「ですから一緒に旅をする人がいたらこの町に来れなかったかもしれませんと」
「いや最後の方の」
「いい町なのに」
聞き間違いと思っていたいたがどうやら聞き間違いではなかったらしいこんな町を良い町だと言っている。
別に今のアイリスの周りが特別いい人たちがいるってことはない、ライフがこの町に来た時と変わらず――喧嘩している人とか何か変なものを売っているところもあるそんな町を良い町だと言っているんだ。
「いやどこがいい町なんだよ、廃墟とかいっぱいあるし地面土だし町の人達もすぐに喧嘩始めるところだぞ」
ライフは別にこの町には住んではいなく来たのも少し前だがそれでもこの町のひどさは伝わってきた、旅を続けてきてもここまで酷い町は久しぶりだ。
そんな町を良い町だとアイリス言っているんのだ聞き間違いと思っても仕方がないような気がする。
「私には素晴らしい町だと思います、確かに周りは汚いですし物騒なのは確かですがこの町の人全員が何か他人ではないような気がして」
ライフはずっとひどい町だと思っていたが確かにそういう考えもあるのだ周りに境界線なんてなく色々な所ではしゃいでいる町をいい町と解釈していた。
「それに全員が自分の力で生きていこうとしています、人に頼りすぎることなくほどよく人とふれあい自分の理想を貫こうとしている私にはとてもいい町だと思います」
ここの町と正反対なような所では自分の力で何かしようと考えないやつがたくさんいるのが事実だ。自分達の権力だけでいい気分になっているそんな町よりは世界の厳しさを知っているこの町の方がよっぽどよさそうに思える。
自信満々に自分の考えを言ったアイリスはライフにがどう思っているのかを言ってくれるのを待っているように見据えている。
「確かに権力を勝手に振り上げてる奴らよりはいい感じはするが、ここはクズの町と思うぜ」
結局人一人一人に考えがあるのだ、アイリスはみんな境界線がないこの町がいい町だと言っているが、ライフにはそうは思えない誰が正しいなんて分からない考えを全員が持っているのだ。
「なぜそう思うのですか?」
「それはまた今度な」
この空気だと俺も凄い意見があると思われていそうだ。
「そうですか分かりました」
少し残念そうにしているが諦めてくれたらしい、違うところでまた会うことがあったら言おうと思っていると。
「ライフさん少しお茶でもどうですかやはり傘をさしていてもなかなかの暑さですし立ち話も疲れるので」
確かにすごい暑さだほぼほぼ外に出ているライフにとっては普通に我慢できるのだがアイリスには耐えられないかもしれない傘も持っているし日には弱そうだ。
別にアイリスとこれ以上喋るのが嫌なわけではなく日陰に行った方がいいのは分かるのだがライフには一つ壁があるのだ。
「お茶か、すまんが俺金持ってないんだ」
ライフは悪そうにいけない理由を説明する。
事実としてライフは無駄金を使えるほどお金を持っていなかったが、それよりもやはり信用できないと心にブレーキをかけていた。
普通に話していたがそろそろ十分かとこの場を離れるを意識する。
「それにアイリスの連れに悪いからな」
「どちらも気にしなくて大丈夫です、クロノには元々涼みに行くと言っていたのでそれにお金も全額私が払いますので」
クロノとはアイリスのボディーガードのことだろう一様許可は取っているようだ、それにお金を全額払ってくれると言っている流石に悪いと断ることも申し訳ないと行くこともできるだがライフにはどちらを選ぶか考えることもできなかった
なぜならライフはアイリスの言葉が頭に入ってきていなかった。
それはアイリスの後ろからこっちに走ってきてライフの後ろの路地に抜けていった男の人と女の人に気を取られたからだ。
この町ではあんまし珍しくないが女の人に追いかけられていてたくさんの財布を抱えているそこまではよかったのだがその中にはライフが持ってきた財布と同じような物があった。
追いかけている女の人も取られたのだろうか必死に追っているだがすぐにでも追いつきそうな距離感だ。
もし自分の財布なら今行けば返ってくるかもしれないとライフの頭の中で思考がよぎる。
すぐに追いかけようと足を出した瞬間今まで話していた人を思い出す。
「どうなされましたか?」
アイリスが少し首を傾げて優しく声をかけてくれたのだが今それに反応するだけの余裕がライフにはなかった急いで行かなければ財布が返ってこないかもしれない。
「すまん急な用事ができたまた会ったら改めて話そうぜ」
いきなり離れることに取り繕う言葉を残し走り去る。
ライフが少しずつ遠のいていくのを見ながらアイリスは残念そうに吐息をはき嬉しそうに繰り返す口角を上げていた。
「行きますよクロノ」
アイリスはそういうとゆっくりと歩き出す。
そんな悲しげな声が聞こえているわけはなくライフは泥棒を見つけようと必死に走っていた。
ここの路地は、たくさんの道が入れ組んでいてまるで迷路のようなことになっている。
すぐに走り出したと言ってもここまで入れ組んでいたら見つけれるか分からなくなってくる。
そのような不安を振り切るように右に左にととにかく見つかるようにと走っているとドンと何かが地面に落ちるかのような音が聞こえた。
近い・・・・・・。
ライフは何があったのかと音が聞こえた左通路の方にゆっくりと顔を出していく。
男の人があおむけに倒れその近くにはたくさんの財布と男の人を倒したであろうここで一番の存在感を放つ女の人が立っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます