第312話  おねしょ


 九郎が目を覚ますと既に朝日が窓から差し込んでいた。

 両腕に感じる柔らかさ。右腕はレイアに抱かれており、豊満な胸に包まれる腕を意識すると頬が熱を帯びてくる。左腕はシルヴィアとベルフラムの間に囚われている。戦力の弱さを二人で補い合うかのようにぎゅっと押し付けられている感触は、胸と言うよりは女性の柔らかさに包まれる感じがするが、こちらはこちらで悪く無い。

 ともすれば朝から噴火しそうな状況だが、九郎は青ざめていた。


 昨夜この屋敷で夜を明かす事に決めた一行の内、ファルアとガランガルンは先に風呂を済ますと早々と街の酒場にくりだしていった。

 九郎も少し飲みたい気分だったが、ボイラーの役目があるので女性陣の入浴にも付き合わなければならない。ベルフラムも風呂を沸かす事が出来る事実からは、当然のように目を逸らしていた。酒と女を秤にかけて、どちらに傾くかなど自明の理である。


 クラヴィスやデンテも一緒にいるのでエロい事は出来なかったが、充分にこの世の極楽を味わい、九郎はご満悦だった。

 恋人達との入浴を楽しみ食事を終えてもファルア達がまだ帰ってこなかったので、九郎は唯一残っていたベッドで全員一緒に寝る事を提案した。目に焼きついた恋人達の裸体に後ろ髪を引かれて言った訳では――無い。筈である。

 この旅の目的の一つに、レイアの過去の思い出を取り戻すと言う目的があった。

 だから全員が一緒のベッドで眠ると言うのも目的の一つと九郎は強弁を振るった。


 キングサイズに近いベッドは6人であろうとも余裕がある。成人の体型は九郎とレイアだけであり、ベルフラム達は元よりシルヴィアも小さい方なので、充分にスペースはあった。3人の恋人と同衾することに血液たちは逸っていたが、子供もいるのにそんな痴態は見せられない。強弁を振るった後に自分の迂闊さに気付いた九郎は、久しぶりに過去のトラウマピンクの尻尾に登場願い、自身の欲望を鎮めて眠りについていた。


(……マジか!?)


 ただ無意識下の息子に、九郎はあまり信用を置いていない。

 目覚めた直後に感じた股間の違和感に、九郎は背筋を冷たくする。股間も同じく冷や汗を掻いたように冷たくなっていた。


 滾っている感じはしない。昨夜の位置を思い返せば、両足にはクラヴィスとデンテが取りついており、九郎も大人の男の姿を見せる事への抵抗が、殊の外強くなっていた。クラヴィスの胸がベルフラム達よりも豊かであっても、12歳の少女に欲情するような性癖は無い。クラヴィスがそこらの大人たちよりも大人びていようとも、九郎の中で彼女はまだまだ子供のままだ。


 しかし股間に感じる生温さ。尻まで濡れた湿気に、九郎の頭に羞恥と嫌な予感が湧いてくる。腕に取りつく恋人達を起こさないようゆっくり首を擡げると、クラヴィスとデンテが腹の辺りに取りついていた。そしてその隙間から見える、朝日に照らされた水の染み。


 明らかに粘度の低い水分に九郎は必死に頭を回転させる。

 信用おけない下半身だが流石にそれは無いと信じたい。

 濡れた股間の感触に胆を冷やした九郎だったが、逆に下着が乾いていなかった事で幾分冷静さを取り戻していた。


(俺!? いや、流石にこの歳になって寝小便なんてしねえよ!? つうことはデンテ?)


 そう言えばと九郎は以前ベルフラムが「デンテが時々おもらしするようになった」と溢していた事を思い出す。拠点を得て安堵の気持ちが大きくなるにつれ、気持ちが緩んだのだろうと笑って答えていたが、それが今朝訪れたのだろうか。

 二人の獣人姉妹は揃って九郎の腹に齧りつくようにして寝こけており、3人の下着は揃ってびしょ濡れになっていたが、カピカピで無いのなら問題無いと九郎は胸を撫で下ろす。


(デンテももう10歳だったか? でも今まで怖い事ばっかだったもんな……。夢の中までは助けに行ってやれねえし……懐かしさで気が緩んだ部分もあんのかね? 昨日夜ションベン行かすの忘れてった俺がわりぃな。こいつらガキだってのに滅茶苦茶しっかりしてっから、つい忘れちまう)


 九郎は何だか優しい気持ちになりながら、二人の少女の寝顔を眺める。


『サクライア』には子供も大勢いるため、寝小便は珍しくも無い。雄一の元妻の少女達の中には年齢的には15歳を過ぎた者達もいたが、皆夢に囚われたまま成長を止めていた為、いまだ心も幼いままだった。そういった者達の心のケアも請け負っている九郎からしてみれば、寝小便など可愛いもので、戦闘力だけは突出したトラウマ持ちの少女達のケアは、九郎やアルトリア、カクランティウスなどの『不死者』か、龍二のように少女達を完封できる実力者でないと務まらないほどハードなものだ。


つえつええって思ってても、まだ小学生の年だもんな。ベルが強か過ぎてつい忘れちまう……)


 腕に取りつき小さな寝息を立てているベルフラムと姉妹を見比べ、九郎は微笑みを苦笑に変える。

 ベルフラムの心の強さは突出している。逆境の中でも決して諦めず、『不死バケモノ』になったことをケロリと受け止め、新たな生活にも物怖じせず、けらけら笑う少女の強さは、九郎も舌を巻くほどだ。

 彼女の強さを基準にしては他の者達が可哀想だ――九郎は段々と冷たくなってきた股間を見詰めて再び考え込む。


 別に誰も怒らないだろうが、この歳で寝小便を垂れたと知られるのは恥ずかしいだろう。上手く誤魔化してやれないものかしばし思案し、九郎はゆっくりと両腕を恋人達から引き抜く。

 幸いと言うか何というか、今回はカーテンは愚かシーツも全て持って行かれており、寝具に使っている毛布は自前である。濡れている部分が下半身だけなので、直ぐに洗って乾かせば誤魔化しは効くように思えた。

 こと家電に関して、九郎はこの道を究めている。

 洗って乾かすまでに何分かかるか――頭の中で計算しているとクラヴィスがハッとした表情で体を起こした。

 その振動でデンテもむずかるように目を擦り、体を強張らせる。


「よう、しっかり眠れたか? ベル達が起きる前に朝風呂と洒落こもうぜ?」


 自分達の下半身が濡れている事に気付いた姉妹に、九郎はおどけた口調で言いやる。どちらかなど聞いたところで意味が無いし、デリカシーにも欠ける。こういう部分で気を利かせるのが大人の嗜みだ。


「と、とーちゃ……ごめんなしゃい……」


 九郎の言葉にデンテが消え入りそうな声で呟く。


「何の事か知んねえケド、昨日は熱かったからな。俺も汗掻いちまった」


 怒られるのを覚悟して奮えるデンテの頭を撫でて、九郎はすっとぼける。

 下半身だけ掻く汗と言うのも突っ込みどころが満載だが、昨夜の状態ならその可能性も捨てきれない。子供に言うには破廉恥過ぎる下ネタを口の中で転がし、九郎は静かにベッドを降りる。


「すいません……」


 クラヴィスは自分の下半身と九郎の顔を見比べ、恥ずかしそうに顔を伏せていた。姉としての自責の念と、妹の心の状態を秤にかけたかのような表情に、九郎は苦笑しながら二人を抱き上げる。


「何の謝罪だ? お、そう言えば野宿続きで毛布も洗っちまおうぜ」


 わざとらしく説明口調で言いやりながら、九郎は笑って濡れた毛布を掴む。

 そろりと寝室を抜け出し浴場へと向かう途中、二人の少女は無言だった。


☠ ☠ ☠


「もうっ、起こしてくれた良かったのに!」

「全くじゃ! 目が覚めた途端レイア嬢の谷間を目にした儂らの気持ちが分かるんか! べ、別に気にしとらんがの? でも乳の上に乳が乗っ取るんじゃぞ!? 二段重ねじゃぞ!?」

「す、すみません……」

「責めとる訳じゃないんじゃ! ただちょっと羨ましいだけじゃ!」


 プリプリと怒りながらポムポムとレイアの胸を叩くベルフラムとシルヴィア。

 九郎を挟んで行われていた女の意地の張り合いは、直接対決した途端に勝敗が決してしまっていたようだ。

 胸だけが女の魅力では無い――と言いかけ九郎は口を噤む。寝起きにコンプレックスを刺激された今の二人には、何を言っても通じない気がした。


「後で入りゃ良いじゃねえか。いつでもおらぁ大歓迎だぜ?」


 そもそも二人の怒りの矛先は、今もほこほこと湯気を立ち昇らせている九郎に向けられる筈の物だ。助けを求めるかのように顔を向けてきたレイアに応えて、九郎は鼻の穴を膨らませて両腕を開く。


「朝からそんな恥ずかしい事出来る訳無いじゃない!」

「そうじゃ! 昨晩ずっと悶々としちょった儂等にようそんなこと言えるの! は!? もしやもう儂らの薄い体じゃ欲情せんのかや!?」


 返って来たのは一瞬「ん?」となる言葉だった。

 顔を赤らめがなり立てる二人。特にベルフラムの口から『恥ずかしい』の言葉が出るのは珍しい。いきなりモジモジし出した二人に一瞬呆けた空気が広がる。


「んなわけねえじゃん! 俺だって抑え込むのに大変だったんだぜ?」


 気になる台詞ではあったが、先にシルヴィアの言葉を否定しなければならない。

 九郎は大げさな素振りで目元を覆い、苦労したのはこちらも同じと言い繕う。


「それは知っちょる! 昨晩ベル嬢と眺めちょったからの!」

「俺はそれを知らねえっ!? てかベル、お前睡姦とか癖になってたり……」

「しないわよ! だって……その……クロウが起きてたほうがいっぱいしてくれるし……」

「飯食ってる時に生々しい話すんじゃねえっ!」


 痴話喧嘩にもならない惚気合いをガランガルンの怒鳴り声が遮る。彼の言う通り朝食時にする話では無いと我に返った九郎達は、一様に顔を赤らめ静かにパンを齧る。


「ん、んん! んで、ファルアよ。どうだったんじゃ?」


 シルヴィアがわざとらしく咳をしてファルアに向き、話題の転換を図った。

 短い言葉のやりとりだけで話が通じるのは、旅慣れた仲間の証だろう。ファルアは眉をピクリと跳ねあげ「仕方ねえなぁ」と言いたげに口を開く。


「治安の面じゃそこまで悪いって訳でも無かったが……前に来た時よりは荒んだ感じがしてたな。嬢ちゃんが治めてた時より税が上がってんのは確実だろうよ」


 昨晩ファルア達が酒場に繰り出していたのは、(ガランガルンの目的はさておき)酒が目的ではなく街の情報の収集の為である。

「仲間の安全を確保する為には街の様子を見ておくことは必須」がファルアの持論である。狩りよりも街で死にかけた経験の方が多い彼ならではの言葉とも言える。

 ミスラの『エツランシャ』でも事前に情報は得ていたが、『エツランシャ』はどうしても後追いの情報になってしまう。また今回はアルベルトが意図してエルピオスの痕跡を消そうとしていたようであり、ファルアも慌てて情報の再収集に向かった形だ。


 不測の事態に備えるためにも、新鮮な情報は不可欠。

 仲間の安全を担っているつもりの九郎も、神妙に姿勢を正してファルアに続きを促す。


 ファルアは一拍置いて周りを見渡し、頬の傷を撫でて話を続ける。


「んで、前には見かけなかった奴隷商も入って来てるみてえだったな。ま、この辺は国が荒れてちゃ当然っちゃ当然なんだが……」


 幾分ファルアらしからぬ歯切れの悪さは、元の為政者ベルフラムを気遣った形だろう。奴隷と言う言葉にレイアの肩がビクリと動き、九郎の眉間にも皺が寄る。


 以前のアルバトーゼの街は、浮浪児はいたが人攫いはいなかった。しかしこの国も奴隷制を敷いている国の一つ。悪人はどの街でもいるし、ファルアが言うように国が荒れればその数は増えるのも道理である。


 攫われた経験のあるベルフラムも思う所があったのか、難しい顔で食事の手を止めていた。


「んじゃ俺、ボナクさんに連絡しとくわ。悪人を肥え太らせるのは癪だけど、丁度近くに拠点があんだ。今回は関所の問題も軍の問題もねえしな。あ、もしもしミスラ?」


 例え僅かな期間であっても、アルバトーゼの街は九郎にとっては思い出深い街なのは変わらない。ベルフラムの憂いを慮ったわけではなく、単純に九郎自身が奴隷と言う単語に反応していた。


 奴隷制を無くす等と言う大それた事は言えないが、少しでも救える人は救いたい。

 奴隷を買い求めると言う事は人攫いを助長させる――かつてルキフグテスが言った自嘲の言葉が頭の角を過っていたが、九郎に迷いは無かった。


「え? ファルアに言ってある? 魔族がうろつくと警戒されそうだから? 人族中心で?」


 ただこの有様はミスラの予想の範疇だったようだ。

「王国が滅ぶ様も見ていたのに、そこを予想出来ないのは……」とミスラに言われて、九郎はファルアに顔を向ける。


「姫さんを責めてやんなよ? お前は2つの事が同時に出来ねえからって気を使ってたみてえだしな。祝い事を知らせに行くにゃ、必要ねえ情報だ」


 ファルアは肩を竦めて悪びれなく言って来る。

 ファルアは九郎の護衛だけでは無く、ミスラから内情視察の依頼も受けていたようだ。既に何人かのアルム海軍が『サクライア』を離れてレミウス領内の奴隷商に近付いていると聞かされ、ミスラの抜け目の無さに呆れながらも、九郎は胸を撫で下ろす。


「ボナクのオッサンが言ってたぜ? 王都から一番離れたこのレミウスに逃げ込んで来る人間は多いだろうから、当然人攫いも集まってくるだろうってよ。裏と渡り・・を付けた感じじゃ、新参は大概排除してはいるみてえだったがな。

 もとから冒険者の多い土地みてえだし、他より入り込み易いってのも狙い目の一つなんだろ。ただそんだけ危険な土地でもあっから、他領の半端崩れじゃ早々に魔物の餌じゃねえかとも言ってたな」


 物騒な台詞を事無げに言いながらも、ファルアは鋭い視線を九郎に向ける。

 威嚇されているような表情だが、これがこの男の「任しておけ」との言葉だと知る九郎は、神妙に頷き食事を再開する。

 子供や女性を引きつれている今、みだりに首を突っ込むのは思慮に欠ける。

 見ず知らずの他人にかまけて大事な身内を危険に晒しては、本末転倒も良いところだ。だからこそファルアは今迄ミスラの依頼を受けていた事を明かさなかったのだろう。強面のリーダーに感謝の念を送りつつ、九郎はふと新たな懸念を覚えて口を開く。


「他領よりも荒れてねえって、他はそんなに酷いんか?」


 国が荒れる大元の原因は、この国の王が人を人と見ておらず『魔動人形ゴーレム』化を目論んだのが発端だと聞いていたが、そこには同郷の『来訪者』、雄一と五十六が絡んでおり、結果的に九郎も王国の崩壊の引き金を引いた形だ。

 後悔はしていなくても、日本人同士の諍いに巻き込んでしまったのは事実であり、少しばかりは気が咎めていた。


「もともとアプサルは小国家を纏めた国だかんな。王家が転覆したら当然戦乱時代に逆戻りだわな。とは言え頭の貴族が軒並みおっんじまってたから、今はまあまだ混乱してる途中って感じみてえだ。ただ取り締まる側がいなくなっちまったから法律も糞も無くなっちまって野盗に堕ちるやつ、好き勝手暴れる輩が増えてるみてえだな。ま、人族も本質的には獣と変わんねえってとこだろ」


 九郎の問いにファルアは肩を竦めながら薄ら笑いを浮かべていた。

 自らも人族であるから自嘲も混じっている。剣呑な視線と凶悪に歪められた口元は、確かに一匹の獣を思わせる。

 ただそこには『法律』で縛られなければ自分を律せない者達を蔑む感情も見て取れた。冒険者と言うならず者として生きてきた彼等の矜持からすれば、法が無くなって暴れる輩は小物に見えるのだろう。


「しかしそうすると奇妙な話じゃの? 他領よりも被害の少ないじゃから領土拡大に動こうとせんのかや?」

「お兄様にそこまでの野望は無い気がするなぁ……」


 この世界は弱肉強食の理念が地球よりも遥かに強い。

 シルヴィアが首を傾げたところにベルフラムの呟きが混じる。

 九郎が感じた通り、ベルフラムもアルベルトの性格を『事なかれ主義』と見ていたようだ。老齢に差し掛かるまで領主の息子の地位に甘んじていたり、王の異様な雰囲気に即座に膝を折って領地に引き籠っていたり。結果臆病な性格が幸いしてレミウス領が他領よりも荒れていないのだろうと、ベルフラムは複雑な表情で息を吐く。


「嬢ちゃんの言う通り『アルベルト公は覇気がねえ』ってのは酒場のやつらも言ってたがよ? それとは別口の問題もありそうだったぜ?」


 今や肉親の縁も切れた兄に複雑な感情を浮かべたベルフラム。

 その様子にファルアは口の端を歪めて肩を竦める。


「問題?」

「おお、昨日ついでに素材を現金に換えにいったらよ? どうにも魔物の数が減ってるらしい」

「? それは良い事じゃねえのか?」


 おうむ返しに聞き返すベルフラムにファルアが答える。

 その言葉に九郎は首を傾げてさらに問う。


「馬鹿かお前は。冒険者が多いってのに魔物が減ってちゃ飯の種が無くなるってことだろうが」


 その問いにガランガルンが呆れた様子で口を挟む。

 痩せた土地のレミウスは魔物が多いからこそ冒険者が集まる土地になっていた。

 冒険者の多くは魔物を狩り生計を立てている。この地では護衛の仕事も並行して受けられるからこそ、冒険者が集まる下地があり、僻地にも拘らず成り立っている背景があった。


「どうも素材の品薄状態が続いてるらしい。それにかけちゃこちとら儲けられたから良いっちゃ良いんだが……」

「なんじゃぁ? いつもにも増して凶悪な面しおって……」


 九郎の思慮の足りなさを嘆くガランガルンを横目に、シルヴィアがレイアの影からファルアに尋ねる。

 ファルアはその問いに眉を顰め、嫌気をこれでもかと顔に表し口を開いた。


「どうにも増えてるらしいんだよ……」

「? …………!? まさか……」

「なんだよ? 分かんねえから説明してくれ! 何が増えてんだよ!?」


 意味不明なやりとり。しかしシルヴィアの表情には、口にするにも悍ましいと言いたげな嫌悪感が混じっていた。


 不吉を感じて声を荒げた九郎に、ファルアは凶悪な顔を更に歪めて声を潜める。

 その顔は虫嫌いがゴキブリを語るのによく似ていた。


「…………『小鬼ゴブリン』」

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