第15話 使徒、乾燥?or換装?注意報-2-ドリューの一族

「この姿では、お初にお目に掛かる。」

 そう言って、地中からにじむように姿を見せたのは、ツルハシ担いだガッシリした肉体のガテン系男性。手はやたらと大きくヤッ〇ーマンに出てくる悪役の一人かよって感じのアンバランス。

 いかにも、穴を掘りそうな風でつい、笑ってしまった。


 時代掛かった口調が妙にマッチする。

 想転移パシスタは思念だから、口調では無いため、そこら辺は今回初めて知った。プの方たちの念話パシスは、そう考えてみると口調まで再現していたから、使い倒しているのだろう。


「コーネツか」

 語尾が震えないようにするのが精一杯、なのだが、ふ、腹筋が痛ひ。


「いかにも、あるじ殿、エンドリューのコーネツ推参いたした。」

 明確に契約を交わしているわけでは無いが、既に彼の一族はこの国どころか王城に住み着いている。何か事があれば、俺の責任になるために一番の魔力の溜まる場所である利き手のツメの一本を一部削った物を渡して貰っている。


 転移の目印にするためだ。


 既に俺に馴染んでしまった固有の魔力なども目印になるのだが、転移捕獲の確率が一桁は違ってくるからな。

 それでも、その精度もランジェ母さまには負けているのだが……。


「う、うむ。ちなみに聞きたかったのは、『エンドリュー』とはなんだ? おんどりゃーの親戚かなんかか?」

「おいおい、何だよ、そのおんどりゃーっていうのは?」

 真面目に答える『コーネツ』に俺が茶々を入れるが引っかかったのは、親父のムーラサキだけ。うぅ……、むなしい。


「『アッイガイ』、もといシノブ殿の話していた『エンドリュー』とはこう書くのでござるよ。』


 ヒト化した自分の右手の人差し指を筆代わりに見立てて、今出てきた地面になにやら古代文字を書いていく。


えん土竜どりゅう

 変な文字では無いが、なんか意味深な言葉だな。


「………………、火モグラの一族じゃ無かったのか?」

 経歴詐称か? おい!


それがし、火土竜モグラでござるよ? 同じ火土竜モグラのネッツと婚姻したときに称号に変化があったでござるよ。」

 火と火で炎、コーネツにネッツ。こりゃいつまでもアッチッチ~な関係だな。


「あ………、ああなるほど。じゃあ、嫁も炎土竜なのか?」


「火モグラのままでござるよ?」

「え……、そうなの?」

 火より炎の方が偉そうなのだが、どうやら尻に敷かれているようだな、コーネツよ。


「そんなしょーも無い会話してないでさ、早いとこ、『ディノ』を助けてやってよ。」

 シノブ・エドッコォ様から指示がありました。


「はぁ………、だって氷結したよ? 死んだでしょ、あれ。まぁ、おっきな魔石ぽいところは装転移パワスタで隔離してあるけど……。」

 だって、称号で【竜殺し】って、付きましたよ? 


 どうも第二夫人だって聞いてしまったら、俺の口調が変わってしまった。

 まあ、あのチャランポランに付いてきてくれるというだけで有難いものだもの。

 ましてや前世の関係を含めると俺も人ごとでは無いということだし……。



「それが『ディノ』の本体よ。」

「え……、本体ってどういうことッスか?」


「言ったでしょ。さっき『……空と陸と地中の三人で「カラス執事族のアッイガイあたし」、「換装ユニット岩団ガンダ〇ディノ」、「エンドリューのコーネツ」』だって。」

 ああ、言っていたな。………ん?


「あれ? 「換装ユニット岩団ガンダ〇ディノ」って、なんなんだ?」


 というか、誰だよこんな二つ名つけたヤツ。

 ん……、換装ユニットっていうことは……。

 まさかのコアブ〇ックシステム? とでも言うのか? だが、それにしては大きめの魔石くらいの大きさしか無いぞ。三十セチ角くらいだ。これで魔人とか言うの?


 いや待て。古代ニッポン州のジャパニメに有ったアレか? 魔人〇ーZ? アレ?


 ともかく、鑑定してみよう。

「……………ハァ?」

 いや、唖然としたよ。


【名】ディノ・ニクス・ドリュー

【称号】換装ユニット岩団ガンダ〇

【HP】 2500

【MP】  950

【STR】 590

【VIT】 439

【DEX】  82

【AGI】  60

【INT】  52

【LUK】  45

【属性】  土78/闇58

【スキル5/5】ブレス5/強化15/身体操作16/身体生成5/脳筋MAX

【控えスキル0/10】

【装備】 鋼鉄の骨/鋼鉄の牙/魔金オリハルコンの鱗/魔銀ミスリルの目玉/黄金の神経/魔金剛アダマンタイトの爪/純銀のたてがみ/銅の水溶液の血液/鉄の胃袋/竜の筋肉


 完璧な脳筋だった。というか、脳筋ってスキルだったのか?

 コアになっているヤツの体を調べると恐ろしいリストが出来上がった。これは公表は出来ない。というか、よく凍ったな、これ。


「まぁ、いいでしょう。……はぁ、装転移パワスタで固定してしまいましたからあの巨体だけでも何とかしないと駄目ですね。下手に周囲まで解凍してしまうとその途端に腐食崩壊が始まってゾンビドラゴンに襲われそうですね。コーネツ、手伝ってください。あなたも三人目が居ないとその姿になれないんでしょう?」

 ボケとウケを取るのは一時休止する。チト、事が事なので。


「よろしくお願いするでござる、主殿。」


 俺の層庫に一気に落とし込むことは不可能なので今のところ。

 コーネツの穴掘りも活用していくことにした。問題なのは、ディノニクスタイプのディノ・ニクス・ドリューとかいうヤツの体の組成が外部に漏れること。

 鉄の胃袋くらいなら問題ないのだが。


 いったいディノというヤツは、何年掛けてこんな体に仕立て上げたのやら。

 ゾンビドラゴンになると言った時点で、後ろに居る王族の方々はガタガタ震えだしたのだが、気付かなかったことにしよう。

 怖い物見たさと、過ぎた好奇心は猫を殺すよ。

 猫かぶりの方々? いや、ネコ耳の方々も既に戻ってきていた。

 何か、後ろで報告していたようだが、こっちはそれどころでは無かった。


「コーネツ、ホショホショ」と、打ち合わせを簡単に終わらせ、コーネツは滲むように地下に消え、俺は風を呼ぶ。


「風よ、我をいざなえ! あの頂きに!」

 俺の言葉に従い、城の下の畑から舞い上がってきた風は、テラスから飛んだ俺の体を纏うコートに浮力を与えた。そのまま、ディノニクスタイプの頭までかけた。


 頭のところに降り立つと、靴の裏に生やした氷のスパイクがディノニクスの体表を覆う氷と融合し、俺の体の落下を防ぐ。

 そのまま、地下に居るコーネツに指示を出す。

 このディノニクスのコアを層転移クラスタで囲い、装転移パワスタで固める。


 想転移でコーネツとディノというヤツに意思を伝える。ほどなく了解の念を受け、作業を始めた。

 まずは相転移イコスタで凍っている場所から氷を取り除く。

 素早く両手をくっつけて、双転移ダビスタで層庫に収めていく。

 スピードが命とは言え、これだけの転移を行っていると、空間魔法のレベルが上がったのか。層庫に転移するスピードが上がっていく。


 やがて、コーネツの援護により、下からもや・・が這い上がってきていた。

 ディノニクスの大きさは25メルもの大きさ。ほぼ城の高さと同等であり、ニッポン州のビルだと十二階建ての高さに相当する。

 現在、地下から火モグラたちの熱気が伝わってきていた。


 ディノの足元の地下一メルほどのところで半径五メルほどの円を描き、コーネツたち火モグラが高速で走り回っていた。ディノニクスの足元の氷を溶かし、ほんのりとした湯気が上昇気流を生み出していた。もやがどんどん上がってくる。


「あの子、やるわね。」

「俺の自慢の息子だからな。」


 だー、イチャついてんな!

「コーネツ、やれ!」

 とっておきの指示を出す。

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