最高の協力者。
「私……ちょっと緊張してきました……」
二日後の待ち合わせ場所である新宿駅東口の交番前。
その場所が見えるロータリーの向かい側で俺達二人は待機していた。
集合時間の十分前ぐらいに熊井さんの元に三浦さんから連絡が届く。
熊井様
お世話になっております。三浦です。
黒のパンツに白のシャツ、赤縁の眼鏡をかけているのが私です。
到着しましたらご連絡ください。
メッセージを読んですぐに俺は赤縁眼鏡を探す。
いた!あの人だ!
すらっとしたシルエットの髪がボブぐらいの長さで明るめの茶髪の女性が三浦さんに違いない。結構美人だ。
「たぶんあの人です!」
俺は例の女性を指さしながら熊井さんに報告する。
熊井さんも指を差された方に目をやり例の女性を見つける。
「あの人っぽいですね」
「そしたら計画通り俺があの女性の傍に行ったら連絡してみてください」
俺と熊井さんはこの二日間様々なプランを立てた。
まず初めに三浦さんが女性ではなく男性だった場合だ。
熊井さんは美人かつYouTubeに顔を出してしまっている。それによって好意をもった男性が女性を名乗って接触してくる場合も考えられる。
その場合に備えて予め俺が三浦さんを確認して女性であれば一旦熊井さんが接触する。
喫茶店での話をすることを提案してそれで進むのであれば美人局やぼったくりバーのような詐欺関連の心配もないので熊井さんの身の安全はとりあえず確保される。
ここまでクリア出来ればゆっくり安心して映像の話を出来ると思う。
あと気になるのはお金の話と彼女の目的の話だ。目的が動画制作に対してのお金であれば話が早いのだがそうでなかった場合は何が目的なのかを探らないといけない。
昔から芸能の世界は怖いと言われている。実際そうなのか俺は全然わからないが芸能界の闇みたいなのはYouTubeで見たことがあるからそうであると考えて動いたほうがいいだろう。
俺が被害を受けるなら百歩譲っていいとしても熊井さんが被害を受けるのは駄目だ。YouTubeやりませんかと言ったのは俺だ。だからこそ俺が責任を持ってやっていかないといけない。
そんなことを考えているうちに俺は例の女性の横に着いた。
タイミングを見ていた熊井さんが、俺が着いたタイミングでメッセージを送る。
ピロン
例の女性のスマホが鳴る。
俺はこの人からは見えてないのでスマホをのぞき込む。
熊井さんからのメッセージだ。これでこの人が三浦さんであることが確定した。
てかこの人、女性の割には背が高くてスタイルいい。そして眼鏡で隠れているが普通に美人。
俺はすぐさま熊井さんの所に戻って例の女性が三浦さんで間違いないことを伝えた。
「そしたら第一チェックポイントは通過ということですね。そうしたら次は私の出番ですね。彼女に接触してきます」
そう言うと熊井さんは三浦さんの方へと歩き始めた。
「すいません。三浦さんですか?」
「あっ、はい!私が三浦です!」
熊井さんが三浦さんに接触する。
てっきり三浦さんは落ち着いている感じの大人系美人かと思ったが高めの可愛らしい声で活発そうな雰囲気があった。
「ここではなんですし喫茶店でも行って話しませんか?」
熊井さんが提案する。予定通りだ。
「ぜひ!私も落ち着いた所でお話出来ればと思っていました。ここの辺りだとどこかいい所知ってますか?あまり新宿に来ないもので全然わからないんです」
彼女は申し訳なさそうに告げる。
「ちょっと先に喫茶店があるのでそこにしましょう」
熊井さんはそう言うと三浦さんからは見えないように俺に目配せしてウインクをした。
これで第二チェックポイントも通過だ。とりあえずここから先は熊井さんの身に何か起こるということはないだろう。
三浦さんが最高の協力者になることを祈りながら俺は二人の後についていった。
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