RUN:ゼロから始める幽霊生活。
子供のように泣きじゃくる俺を彼女はとりあえず家に上げてくれた。
正直この時の俺にはなぜか恥ずかしいという感情は微塵も無かった。
親の前でもこんな泣いたことが無かった俺はこの溢れ出す感情をどうすればいいのかわからなかったというのが真意である。
彼女はそっと俺の頭を彼女の豊満な胸に導いてくれた。
そのあと滅茶苦茶泣いた。
「落ち着きました?」
一通り号泣して、落ち着いてきた頃彼女は言った。
正直な話、彼女の胸に永遠に顔を埋めていたい欲が途中から泣いてることより強くなりすぎて五分程泣いているフリをしていたというのは内緒のハナシだ。
「ごめんなしゃい。取り乱してしまって」
呂律が回りきっていないがアニメの話以外はいつも回らないので良しとする。
「落ち着いて良かったです。玄関開けたら泣きじゃくっている末松さんいてびっくりしましたよ」
彼女は微笑みながら答えてくれた。
「ごめんなさい。ごめんなさい。家で電気も付けられないし声も誰にも聞こえないし、なんか泣いてしまって」
なぜだろう。今はすごく自然に本心が話せる。これも幽霊になった恩恵なのだろうか。
「私こそ末松さん、モノに触れられないから帰っても何もできないのに帰してしまって。あれ?でもチャイム……」
そこまですっかり忘れていたのだがそういえば俺、なぜかチャイム鳴らせたわ。
もしかして触ることが出来るようになったのか?
恐る恐る彼女に手を伸ばしてみる。傍から見れば完全に変態。痴漢をしようとしている光景にしか見えない。
彼女もこの異様な状況よりも俺がモノに触れるかもしれないという興味の方が勝っていたのか不快な顔をしない。これはラッキー!このままその豊満なお胸にデュフフフ。
まぁその時はそんなことは考えていなかったんですがね。
結果から言いましょうかね。残念ながら俺は彼女に触れることは出来なかった。
いや、手ですよ?胸にタッチしようとした情景を思い浮かべた方は挙手。
はい。素直でよろしい。
彼女の手をすり抜けてしまった時は結構ショックだった。如何せんこの時初めて人に触れないことがわかったのだから。モノに触れない時点で無理だとは思っていたがいざ現実を目の前に突きつけられるとなかなか応える。
ショックを隠せない俺を見ながら彼女は申し訳なさそうに言う。
「末松さん、もしよかったら来週の日曜日までうちにいますか?」
こうして俺は晴れて彼女の守護霊もとい背後霊になったのである。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます