俺の一番の宝物。
気まずい沈黙。
あの時正直にアニメが見たいから幽霊になったんです、といえばよかったのだろうか。
いや流石にそれはNGだろう。
しかし俺には他の的確な回答は浮かばなかった。
意を決して俺は
「強いて言えば僕アニメ見るのが趣味なんですが今最終回ラッシュで見たいのもあったかなぁとか思ったりしてたんですよねぇ」
引かれても仕方がない。これか現実なのだ。恥ずかしかろうがみっともなかろうが自分で誇りを持たなくてどうする、末松和彦。
This is real.This is me.だ。
「じゃあその思いが末松さんを幽霊さんにしたんですね!」
彼女は目を輝かせながら言う。
ああこれでよかったんや。超絶簡単やん。
It's easy.This is all.案ずるより産むが易し。現実は小説より奇なり。
「先程お話したバイトの後輩、堀さんというんですが彼もアニメ好きですよ!」
元我が
初めて知った。正直どうでもいい。
そんなことより熊井さんの好きなものとかこととかのほうが知りたいです。
出来れば好みのタイプとか聞けるとめっちゃ嬉しいです。
思ってはみるもののもちろん声に出せるはずもなく、この思いは彼女には届かない。
しかし願わなければ叶うことも叶わない。
そう信じて生きていこう。
いや、俺死んでたんだったわ。
「末松さんの好きなアニメは何なんですか。」
よくぞ聞いてくれました。俺は誇らしく答える。
「鬼と戦う剣士のやつです!」
なぜだ。なぜ。なぜここで俺は意地を張ったのだ。たしかにヲタクではなく一般人に人気あるのはあの鬼と戦う剣士のアニメだよ?そりゃね!声優豪華だし!社会現象になったし!
どうせあれだろ?知ってるんだよ!あんまりアニメも見ないようなリア充男が合コンでアニメ好きって女の子いたら
「俺、あの鬼と戦う剣士のアニメみてるよ!」
って話しかけるきっかけ作るんでしょ?
アニメ好きって子が合コンにいたら
「デュフフ、天使ビーツの最終回について語り合いましょう。あなたはどう思いますか。開発者と主人公。デュフ」
って喋りかけるのが常識だろうが!
まぁ再度になるが合コンに行ったことないので妄想なのだが。
今の状況を完結に要約すると、俺は見栄を張って多くの人に人気のアニメの最終回を見るために再降臨したと彼女に言ってしまった。
別に嘘ではない。俺も好きだし!鬼と戦う剣士のアニメ!
しかしそれが最大の理由かと問われれば違う。
自分に嘘をつきながら生きていくというのは死んでいることと同じなのではないだろうか。
そうです。皆様そのセリフで合ってますよ!
『お前死んでるやん』
思わず電車の中で声出してしまった方もいらっしゃるんじゃないですか?
デュフフ。
「鬼と戦う剣士のアニメも好きですがやっぱりあの女の子たちがアイドル目指して頑張るアニメの最終回を見るために僕は!もう一度!この世界に!戻ってきたんです!」
さっきより誇らしそうな顔で俺は言う。これでさっきのは帳消しだ。
少なくとも俺はそう信じたい。
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