麻袋入り遺体

今回は友人の潤さんの話。

網走出身の潤さんの趣味はツーリング。

彼は大学院生で、それまで何があっても決して手放さず大事にしてきた愛車で日本一周の旅に出た。


スタートは北海道。

安宿に泊まったりしながら順調に旅をしてきた彼はある日気が合うライダーと出会い楽しく飲み明かし、楽しい数日を過ごした。


しかし、一人になるとお金を使いすぎた事に気がつく。

そして彼は決意してしまった。

「数日宿代を浮かすゾ。」と。


その日の昼間に道端で大きな麻袋を拾った。

そしてナイスアイデアがひらめいたらしい。

夜になると、こともあろうに彼は184センチもある身体の下半身から麻袋をかぶり、農家の納屋の端で寝た。

カモフラージュ成功!(半分以上出てるし・・・)


ところが、そう上手くはいかなかった。

朝方太陽の光がまぶたに届く頃、おでこにコツンという衝撃を感じる。

つづいて、身体を棒のようなもので叩かれる。

(え?)

目を開けると彼を突いていたのは警察官で、周りを一周人々に囲まれている。

びっくりして飛び起きると、警官も囲んでいる人たちも悲鳴をあげて飛び退いた。


「ギャー!生きてる!」


一同慌てふためいている。

(死んでる方がびっくりじゃないか?)

「麻袋入り死体があるって聞いたからきたら、あんた生きてるじゃないか。」

警官はなぜか怒っている。

さっきまでへっぴりごしでおっかなびっくり「遺体」と格闘していたのに。


警官はプリプリしていたが、納屋の主は騒ぎの後で笑いながら

「声をかけてくれれば泊めたのに」

と、大きなおにぎりを持たせてくれた。

彼は懲りずに麻袋を荷物に追加して旅を続けた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る