第2話 Team

 空を迎えて、2日目の朝。

「おはよー、お姉ちゃん☆」

 空が食堂に入ると、真っ先に美麗が声をかけた。

 空は『お姉ちゃん』と呼ばれたことに少々驚いたが、すぐに笑顔になって、挨拶を返す。

「お~い。なんで昨日の今日で歌津さんは『お姉ちゃん』なんだよ」

 山盛りのサラダを4人分に分けながら、凛人が呆れ顔で突っ込む。昨日と同じく、また2人の漫才が始まってしまった。

 結局歓迎会の後、空は部屋に籠ってしまった。正直、美麗も凛人も翌朝ちゃんと空が出てきてくれるかが不安だったのだが、昨日の自己紹介のときと同じような笑顔で振る舞う空に安心しきったようだった。

「えっと、昴流…君だっけ、彼は?」

 賑やかな食堂だが、そこには美麗と凛人以外の人影は見当たらない。

「ああ、お兄ちゃんなら、外で走ってるよ」

「毎日毎日、雨が降ろうが雪が降ろうが、な」

 いつの間にか落ち着いた様子の2人が答える。

「えと、じゃあ、他の大人の人たちは?」

「ここに住み込んでるわけじゃないからな。宿直のヤツらも、モニター見ながらパンでも食ってんじゃねえの?」

 凛人はそう言って、監視カメラのようなものに視線を向けながらトーストにかぶりつく。

「……モニターって、全部見られてるの?」

「当たり前じゃん、あたしたちは……って、そっか、お姉ちゃん、能力のこと知らな…」

「美麗!」

 昨日のことを思い出し、凛人は美麗を止めようとするが、空は落ち着いた表情で答えた。

「大丈夫だよ。今日はパニックになったりはしないから。昨日はちょっと…嫌なこと思い出しちゃって」

 美麗は凛人に許可を取るような視線を送り、凛人が頷くと、話し始めた。


 昴流、美麗、凛人の3人は、それぞれ特殊な、普通の人間は持たない能力を持っている。美麗は詳細不明。自称、超人的頭脳。凛人は念動力。昴流は他の2人には話したがらないため詳しくは分からないものの、「超感覚」と研究員の誰かが話しているのを2人は聞いたことがある。

 この場所は表向き一般的な研究機関を装っており、国の目すら欺いているが、その実はそういった特殊能力を研究する機関である。

 美麗と凛人の知る限り、敷地外へ出ることが許された例は一度もない。

 研究所にはおよそ100人の能力者たちが集まっている。その中で、特に優れた、また強力な能力を持つ者たちが……


「お兄ちゃんとお姉ちゃんを入れたあたしたち4人、”タウ”ってわけ」

そういって一旦美麗は話を締めくくった。

「タ…ウ?」

「あー、すまない、何の略かは教えてくれないんだ。ただTOUで『タウ』って呼ばれてる。それ以外の連中は、みんな地下の階でそれなりに自由に暮らしてる。俺たちは地上の階で暮らせるが、その代わり、24時間監視の目にさらされて、加えて任務を課せられる」

「……任務?」

「うん、それが……」

その時、アナウンスが流れた。

『TOU、ミッションルームへ直ちに集合せよ』

「ほら、噂をすれば、だ。実際に行って話聞いた方が分かりやすいと思う」

「口ぶりとかSFの見すぎだと思わない?」

 美麗が呆れ顔で言って、一欠片のトーストを口に詰め込むと、2人は走り出そうとする。

「あ、ちょっと…」

「ほら、お姉ちゃん急いで!」

 空の言葉には耳を貸さず、美麗がその手を引っ張って走り出した。

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