蛍、または私のゴースト彼氏
月嶌ひろり
第1話 自慢の彼氏
大学の休み時間、ショッピングサイトを見ているとき、親友の
「
「見て、これ。可愛くない?」
私はラピスラズリの天然石に月をあしらったデザインのイヤリングを指さして言った。
「可愛い。そして、瑠奈っぽいね」
「でも、ちょっと高いんだよね」
「いくら?」
「1万2千円」
「高いね。来年、就職してから買えば」
「そうしようかな」
「ところで、瑠奈。土曜日の夜、暇?」
「どうして?」
「
私はその夜のスケジュールを思い浮かべた。
「あ、ごめん。その夜はダメ。カッちゃんが帰ってくる日だ」
カッちゃんの名前は
「そっか。たまにしか会えないもんね。楽しんでおいで。千佳には私から言っておくから」
「ありがとう。ごめんと言っておいて」
*
土曜日の夜、バイトを終えてアパートに帰ると、人の気配がした。
玄関のドアを開けると、暗い部屋の中で、パソコンのモニタが光っている。
「カッちゃん!」
「おう、おかえり」
「また電気もつけないで仕事して。目が悪くなるよ」
私は部屋の灯りをつけながら言った。
「始めるとつい夢中になってな。夜になってたの、気づかなかったよ」
「置き手紙は見た? おにぎりつくってあったんだけど」
「すまん。それも気づかなかった」
「まったく……」
私は、サランラップでくるんだおにぎりが手つかずのまま残っているのを確認して、ため息をついた。結婚後のことが思いやられる。
「お腹空いてるでしょ。おかずも何か、すぐにつくるよ」
「腹はあまり減ってない。ここに来る前、ラーメンを食ってきたから」
「それ、何時間前の話?」
「そんなことより」
と言って、いつの間にか私の後ろに立っていたカッちゃんが、私を羽交い締めにした。そして、強引に振り向かせると、長いキスをしながら、ブラウスのボタンをはずしていく。
「ちょっと待って。今日は汗をかいてるから」
「いいよ、そんなの」
そのとき、ピンポーン、と呼び鈴が鳴った。
私があわててブラウスのボタンを留め直し、玄関のドアを開けると、宅配便だった。
「印鑑かサインを」
「あ、はい」
荷物は、小さな箱だった。
その箱を開けると、中にプレゼント包装された箱がまたあった。
「なんだろう?」
「開けてみろよ」
カッちゃんがいたずらっぽく笑う。
包装を丁寧にはがして、箱を開けたとき、私は本当に驚いた。
ケースの中に、ラピスラズリの天然石に月をあしらったデザインのイヤリングが入っていた。
「すごい。これ、どうして私が欲しがってるってわかったの?」
「瑠奈が欲しがりそうなものくらいわかるよ」
「ありがとう」
私はカッちゃんの首に抱きつき、耳たぶを噛んだ。そこが彼の弱点だった。
カッちゃんはすぐに形勢を逆転させると、私をベッドに押し倒し、スカートのホックに指をかける。
私はベッドに置いてあるリモコンで、部屋の電気を消した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます