第9話 僕もビックリした
何処か、きっとお父さんのところだろう。リタさんは引っ張り返したり、拒否したりしないで歩みが遅いながらも引っ張られるままに付いて行く。
僕もその後を付いて行った。
「ねぇ、マルチーヌ。あなたもしかして、パパが魔法の解き方も魔法をかけたのも私だと知ってると思って無い?」
「そうじゃないの?」
「違うわよ。パパは魔法の事は何も知らない」
「だって! あの魔法は、古術魔法じゃなくて“私たちの家に代々”伝わる秘術魔法なんでしょ」
「そうよ、私たちの家に。けれどね、パパの方の家じゃ無い。ママの方の家なの。ママから私に秘密裏に伝えられたわ。本当だったらママからマルチーヌにも伝えられるはずだった」
姐さんの歩みが少し遅くなった。
そっか姐さんは、お父さんが魔法の事も解き方も知ってるはずなのに、知らないフリをして解いてもくれなかったと思って怒って乗り込もうとしていたのか。
けれど、少し立ち止まったかと思うと姐さんは再びリタさんの手を引きながらズンズン歩いて行った。
「ねぇ、ちょっ、マルチーヌ! 誤解は解けたんでしょ。何故このまま私を引っ張って行くのよ」
「パパに言わなきゃ。お姉ちゃんは、ずっと傍に居たんだって。あたしの事はもちろん、パパの事も心配だったんでしょう?」
「パパ!」
姐さんは、リタさんを引っ張りながら自分の家の道場に来た。
道場に入ると、胴着を着た初老の男性が瞑想するように座っていた。姐さんの呼びかけに目を開いたが、男性が見つめたのは姐さんでは無くリタさんの方だった。
「リタ、何で……」
「パパ」
「パパ、お姉ちゃんはね、ずっとあたしたちの傍に居たのよ。見守っていたの」
「私はカラダを離れるわけにはいかなかった」
男性……二人のお父さんの顔を見ないで、リタさんは喋る。
「病を罹った後、息子は施設に入っていたわ。完治してから迎えに行くと息子はウオヂの道場に弟子入りしたと言う。まだ六歳だったけれど施設に教えにきた師範代が見込みがあるからって引き取ったと」
「 お姉ちゃんもね、お母さんと同じ流行病に罹っていたんだって」
口早に、姐さんがお父さんに補足する。
お父さんの目が大きく見開かれた。やっぱり、お父さんは勘当しても娘が大事なんだなと思った矢先、リタさんがトンでも無い事を言った。
「息子が弟子入りし、引き取られたウオヂの道場はここよ」
お父さんは更に驚きの表情になり、そして姐さんが、えっ! という声をあげた。
「私の息子の名は、ダリン……」
「えーっ! ダリンがお姉ちゃんの息子?」
「……じゃあ、わしは、孫と娘を結婚させようとしていたという事なのか?」
そっか、お父さんの言う通りだ、なるほどそれでリタさんは。
「パパは、私の時のことに懲りもせずまた娘と弟子を結婚させようとした。しかも知らないとはいえ、孫と。だから私はマルチーヌを呼び出して幼女にする魔法をかけたのよ」
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