第7話 僕、混乱しそう

 薬屋につくと、確かにお店には、おばあさんが一人座っていた。

姐さんは引き続き元気を失っている。僕が替わりに聞いてこよう。店の外に姐さんを残して僕一人で店に入って行った。


「いきなりですみません。ちょっとお尋ねしたいのですが、ブラウン道場のダリンさんにドーナツを差し入れしていたのは、おばあさんですか?」


 何を聞かれているのだろう? と咄嗟には把握出来なかったのだろうか、おばあさんは少し間を空けてから

「そうだよ」

 と言った。

「ファンなんですか?」

 ダリンさんにはファンが多いと聞いた。このおばあさんも、そういったファンの一人というだけなのかもしれない。


「あの子の好物だから」

 リタおばあさんは言った。


 ガタン! 姐さん が大きな音をさせて店の中に入ってきた。

「もう! 訳わかんないよ。頭パンクしそう」

「姐さん?」

 さっきまでの落ち込みようとは反対に、何故か怒りをまとっている。そんな姐さんに驚いたのだろう、リタおばあさんは立ち上がって一歩下がった。

 年配の人を驚かせてーと姐さんの行動に、しょうがないなぁと思っていたらリタおばあさんは、呪文を唱えて四十代ぐらいの姿に変わった。嘘……。あっという間の事だった。


「これがね、私の本来の姿」

「目狐じゃ無い。それよりもっと老けてる」

 姐さんの言葉に、リタさんは柔らかく微笑んだ。悪いことをした人の顔じゃない。もっと優しい柔和な感じだ。

「あれはねメイクよ、わざとツリ目にしたの。この魔法はね、禁術とさ れている古術魔法じゃ無いの。私の家に代々伝わる秘術魔法なのよ」

「秘術魔法?」

「そう、古術魔法と違って、この魔法は自分自身か血の繋がった者にしかかけられないの」

「血の繋がったって……」

 そう姐さんが言うとリタさんはまた呪文を唱え、姐さんが、姐さんが……多分もとの姿だろう二十代ぐらいの女性の姿に変わった。


 熊女じゃ無い、筋肉がついていると分かるのに細身でしなやかな、そして出るところは出て引っ込むところは引っ込んでいる、いいスタイルの女性の姿だった。

「元に、元に戻った!」

 やっぱり、リタさんは優しく微笑んでいる。そんなリタさんをネブミするかのようにジーっと姐さんは見つめていた。

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